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ENDRESS TALE

火炎の翼持つ者 黒き門より下る 3

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           ◆

 二階の部屋で、アリスはすやすやと穏やかに眠っていた。七年ぶりに会う異父妹は、少女の頃の面影を残しながらも美しい女性へと成長していて、華やかな美貌を誇った母親にもよく似てきたその変化には目を瞠らずにはいられない。しかし、アリスがユリの前で目覚めることはなかった。
「どういうことだ?」
「見てのとおりだ。もう一年半、アリスは目を覚まさない。正確には、ニューヨークで起きたあの最初のテロ事件以来だ」
「まさか……ニューヨークにいたのか?」
 最初に思いついたのは、いまだにその正体もはっきりしないというテロに使用された細菌兵器のことだった。ニューヨーク型ウィルスと呼ばれているそれは、現在各国の最高ランクの研究者たちによって分析が進められているが、効果的な治療方法は見つかっていない。
 マンハッタンへのあらゆる出入りを封鎖することによって、なんとか東海岸一帯への拡散を防いでいるものの、それ以上は手の施しようがないのが現状だった。
 アリスがその謎のウィルスに侵されているのではないかと疑ったユリに、アーサーはしかしあやふやな仕種で首を振った。
「確かに、あの日、アリスはニューヨークのメトロポリタン美術館にいた。パニック状態の中から、病院に収容されたアリスをなんとか見つけ出した時には、既にこの状態だった。だが、アリスにはウィルスの感染は認められていない」
「ウィルスじゃないのか?」
「ああ」
 それにははっきりとアーサーがうなずくから、いくらかホッとして、けれどなおさら一年半も目覚めないというわけがわからない。
 もちろん、アーサーだって一人娘を救うために手を尽くしているだろう。アーサーの立場ならアメリカでもトップクラスの治療を受けられるはずだったし、それで目覚めないなら、謎のウィルス同様に現在の医学では治療不可能な病ということになる。
「気に入らねーな……」
 不可解なことが多すぎる。そもそもニューヨークのテロ事件にしても、不確定な噂が飛び交うばかりで犯人も目的もまだ判明してはいない。アメリカ政府が何か握っているにしても、それが公表されることはなかった。
 だが、軍の中枢にいるアーサーは、少なくともなんらかの情報は握っているはずだと、目の前の男を睨む。
「どうしてアリスを自宅に連れて戻ったんだ? 治療するなら、病院のほうが都合がいいだろう?」
「屋敷には、二十四時間体制で交代に医者が詰めている。病院には置いておけなくてな」
 わざわざそんな面倒なことをする理由はなんだと、さらに追及するようにアーサーを見た。
「病院で、二度、襲撃された。その時は、ロイがいてなんとか防いでくれたが」
「それで、この警戒か? 相手は何者だ?」
 最初に屋敷に入った時から、軍の大物の屋敷だとはいえ警戒が物々しすぎると思っていた。屋敷の周囲にはおそらく高圧電流を流しているらしい鉄条網が張り巡らされていたし、敷地には軍用犬が放され、各所に交代で見張りが立っている。
 ここはペンタゴンにも近いし、再度のテロや暴動に備える意味もあるのかもしれないと考えたが、どうやら彼らが守っているのはアリスだったようだ。
「相手は……忍者だ」
「なんだとっ!?」
 アーサーの絞り出すような答えに、思わず怒鳴り返していた。普通に聞けば、今の時代にアメリカでなんで忍者なんだと笑うところだろうが、ユリたちもつい先日、貴臣の実家でその忍者に襲われたばかりだ。
「まさか、アリスまでが《gate》だとか言い出すんじゃねーだろうな」
「《gate》? なんのことだ?」
 問い返すアーサーの様子では、その言葉には心当たりはないらしいが、明らかに異常な興味を示すまなざしが熱っぽい。やはりこれは同じ謎が根底にあるのかもしれないと、不思議な予感がした。
「俺たちがその忍者に襲われた時、おかしな坊主が貴臣のことをそう言いやがったんだ」
「おまえが? ……忍者に襲われたのか?」
「ああ」
 どうやらアーサーも、同じことを考えているらしい。お互いに一番大切な者を、ひとつの運命の中に巻き込まれている。その謎の中心にあるのがニューヨークだ。
「これは、偶然なんかじゃねー。アリスを襲った連中も、俺たちを襲った奴らも、同じ目的で動いているはずだ」
「《gate》というのが何かはわからないが、ロイの話じゃ、忍者たちは『《ankh(アンク)》を渡せ』と言っていたそうだ」
「《ankh》?」
 また意味のわからない単語だと眉を顰めたユリに、アーサーは「待っていろ」と制して、アリスが眠る枕元に置かれていた小さな宝石箱を持ってきた。細やかな金細工の施された蓋を開くと、赤いビロードの台の上に黄金に煌く小さな十字架のようなものが載っていた。しかし、十字架というには頂の部分が丸く輪になった独特の形をしている。
「エジプトの十字架と呼ばれるものだ。護符のようなものらしい。アリスが倒れていたのはメトロポリタンのエジプト展示室で、病院に運ばれた時、これを握りしめていたそうだ。《ankh》には永遠の生命という意味があり、命の鍵とも言われる」
「ふ~ん」
 いかにも胡散臭いと言いたげにユリは箱の中の《ankh》を摘み上げ、冷ややかな瞳にしげしげとかざした。
「門に鍵はつきものだが……何か、意味でもあるのかな」
 判じ物めいた謎解きは、その後ろに隠れた何かに遊ばれているみたいで面白くない。大体が、今回のニューヨーク行きだって何か大きな力に弄ばれているような気がして、神さまも他人任せの運命も根っから信じていないユリはひどく気分が悪かった。
 だが、忍者が欲しがっているのなら、これがニューヨークの謎を解く複雑なパズルのパーツのひとつなのは間違いなさそうだ。そして、宝物よろしくこんなところに隠しているアーサーも、同じ考えだろう。
「米軍は……いや、親玉は合衆国大統領かな。一体、何を欲しがっているんだ?」
 ワシントンとニューヨークを預かるこの男は、当然大統領から直接の意向を受けているはずだった。恐れもせずに単刀直入に訊ねると、アーサーはとたんに軍人らしい冷徹なおもてを向ける。
「訊いてどうする?」
「場合によっちゃ、あんたと敵同士になる。その辺の考え方を見極めておこうと思ってな」
 まるで気負いも感じさせずに米軍を敵にまわすと宣言したユリの返事には、アーサーは堪らずに笑いだした。
「相変わらず大口を叩くヤツだな。だが……おまえの噂は、横須賀からも耳にしている。侮れる相手とも思ってはいないし、ましていったんニューヨークへ潜り込めば、闇を知り尽くすおまえのほうが有利だろう」
「へえ、そりゃ、随分と過分な評価だな」
 意外そうに混ぜ返すユリを、「調子に乗るなよ」と怖い目つきが射た。もちろん世界最大の米軍の実力を知らないユリではない。ただ、アーサーの言うとおり、ニューヨークの闇ではその力が通用する範囲も限られてくるし、しかも彼らが闘うべき相手は予想もつかない不気味な連中だった。
「大統領の命令は、『ニューヨークの奪還とその機能の回復』だ。もちろん、そこにあるものはすべて、米国政府に帰属する」
「《永遠の力》とやらもか?」
「なんであろうとすべてだ」
 アーサーの回答は明確だった。封じられたマンハッタンの闇の底に巨大な秘密が眠っていることも、そのために密かな闘いが行われていることも、大統領も米軍も承知の上だろう。そして、彼らはその謎を巡る争いに参戦するつもりだ。いや、既に闘いはもう始まっているらしい。
「いいだろう。俺の目的は人捜しだ。別にニューヨークが誰のものになろうが、いっさい興味はない。お互い利害の一致するうちは協力するさ」
 やはり、こんなところに長居は無用だった。早いところニューヨークで芙緋人を見つけて、日本に帰国するに限る。アメリカは、この先もっと危険な状態に陥るだろう。
 気がかりなのは、眠ったままのアリスのことだった。できれば安全な日本に連れて行ってやりたいが、眠り病の原因がわからない限り、ここを離れるのも危険かもしれない。もう一度、掌の上の《ankh》へと、その謎を読み取ろうとするかのようにユリは鋭い視線を注いだ。
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