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ENDRESS TALE

火炎の翼持つ者 黒き門より下る 5

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           ◆

 サンフランシスコやニューヨークのように有名ではなかったが、およそ世界中のあらゆる都市に存在するチャイナタウンは、ここワシントンにも当然あった。米軍や政府の機関がそうであるように、チャイナタウンもまたマンハッタンとの交流を断ち切られた今、その拠点をワシントンに移している。
 横浜の王老がユリにまずコンタクトを取るように指示したのも、現在ワシントンのチャイナタウンを牛耳る李花(リーファ)という人物だった。
 アーサーが握るニューヨークの情報は、まだ比較的安全な地域に治安維持の名目で駐留している特殊部隊からのものだ。しかし、真のニューヨークは彼らも迂闊に入り込めないさらに内部にあった。
 芙緋人の行方を知るためには、彼が身を寄せていたチャイニーズ・マフィアの情報は聞き逃せない。
 ワシントンのチャイナタウンは、ホワイトハウスや政府の官公庁にもほど近い中心部にあった。テロを警戒し、公共の交通機関がほぼストップしている今の状況では、アーリントンからは車で移動するのが最も手っ取り早い。しかし、外国人のユリと貴臣が二人だけでは、各所に設けられた検問を通るだけでも時間がかかりそうだった。
「もし迷惑でなければ、俺が同行してもいいか?」
 朝食の席で、キング家の執事であるダニエルに車を借りる算段をしていたユリに、同席していたロイが思いがけない申し出をした。
 アーサーは、朝早くから召集があって出かけたとかで、今朝は顔を合わせてもいない。ロイがここでのんびりと朝食を取っているのも不思議だったが。
「そりゃ、陸軍大佐が同行してくれるなら願ってもないが」
 制服の軍人が乗っていれば、同じ軍の検問なら簡単に通ることもできる。しかも、大佐となれば将校のうちでも身分は高い。誰を連れていようと咎められることもないだろう。
 とはいえ、昨日空港に迎えに現れただけでも意外だったのに、さらに目当てもわからないチャイナタウンにまで同行しようというのも親切すぎる。今の時期、アーサーに限らず軍人は誰だってそれほど暇じゃないはずだ。
 なるほどなと、ユリは堅苦しい表情の男を皮肉っぽくニヤニヤ笑って見つめ返した。
「あんたが、俺たちのお目付け役か?」
「そう思ってくれてもいい」
 抜け目のないアーサーが、さまざまな便宜を図ってまでユリを自由にさせているのは、ヤクザやマフィアといった裏社会に繋がる軍とは別ルートの情報が欲しいからだ。だが、ユリがいちいち自分の得た情報をアーサーに報告する義理もない。ユリからの情報を手に入れるためには、その動きを逐一監視するスパイが必要だった。
「随分、大物をつけてくれるんだな」
 陸軍大佐ともなれば、アーサーだろうとそう簡単に捨て駒の間諜扱いができるような人材じゃないはずだ。自分で志願でもしない限りは。
「貴様がそんなことを気にするタイプとも思えないが」
 相手が何者だろうと遠慮するような性質でもないだろうと言われて、「まあな」と今度は軽く吹き出した。
「別にかまやしねーよ。ギブ・アンド・テイクといこう。俺だって、異父妹は可愛い」
「マサキ……」
「ユリでいいよ。こっちも、あんたのことはロイと呼ばせてもらう」
 ロイがニューヨークの秘密を知りたがるのは、おそらくアーサーとは目的が違う。真面目な軍人であるこの男は、そこが無法地帯に成り果てようと、マンハッタンの支配者が合衆国政府であることを疑ってもいないはずだった。
 眠り続けるアリスの身を真摯に案じているこの男は、ニューヨークの陰の暗闘に勝機を狙うアーサーよりは、まだしも組みしやすい。
「わかった」
「アリスを、救ってやってくれ」
 うなずくロイへ、ユリはそう頼んで頭を下げた。アーサーにだって、一人娘を想う気持ちはあるはずだ。ロイをユリたちに同行させるのだって、アリスを目覚めさせたいという希望もあるからだろう。だが、陸軍大将アーサー・キングは、たとえ大統領にとっても油断のならない人物だった。
「貴臣……」
 ともかく、これで問題もなくチャイナタウンに入れそうだと声をかけた先、ゆるやかな仕種でテーブルから立ち上がる姿に、もうひとつ問題があったかとひっそりと息を詰める。
 合衆国に入ってからの貴臣のこの変化を、どう考えていいのかはユリにもまだわからない。本人はあまり自覚がないみたいだし、特に騒ぎ立てないほうがいいような気がしていつもどおりに接してきたが、テーブルの向こうで茫然と見惚れているロイの顔つきを窺えば、黙っているのも落ち着かない。
 元々、出会った時から、人目を惹きつけずにはおかないほどきれいな男なのはわかっていた。それでも、過去の傷のせいで何かに怯え、他人の目を避けるように生きていた貴臣は、その本来の姿よりずっと地味な存在だった。
 大人しく目立たないように、無意識に冷ややかな氷の殻に閉じこもっていた貴臣を、強引に抱きしめ、与えうる限りの情熱を注ぎ込んで、鮮やかな炎の色をまとった夜叉の本性を引きずり出したのはユリだ。
 しかし、そのユリでさえも、今の貴臣の過剰な艶には当惑せざるを得なかった。ゆうべだって散々婀娜っぽいまなざしと声音に挑発されて抱き尽したが、一夜明ければそんな自分の大胆な所作にも恥らってみせるのが常だった。朝っぱらから濃密な口づけを求め、一緒にシャワーを浴びながら跪いてユリのものを求めるような貴臣は知らない。まして、ロイやダニエルもいる前で、濡れたままの瞳を向けてくるような人でもない。
 もっとも、その視線が自分だけを見つめている分には、恋人がいつになく艶っぽいのも悪くはないと、密かに楽しんでもいるユリだったが。とはいえ、この先ニューヨークへ入っても誰かれかまわずそんなとびっきり色っぽい顔を見せられたらと考えると、少々ではなく気が揉めた。
 けれど、貴臣自身が意識してそうしているのでない以上、咎めたところで無駄だろう。昨日のおかしな頭痛のこともある。言えば貴臣が気にするのはわかるから、恋人の負担になるようなことを口にしたくはなかった。
 手を差し伸べて、「おいで」とそのしなやかな肢体をできる限り自分の近くへ引き寄せた。少なくともそうしてユリがあからさまに所有権を主張し、威嚇しているうちは、おかしなものが近づいてくることもないだろう。
 テーブルに置かれた貴臣の食事の皿を振り返ってみて、食欲もあるようだと、体調のほうはすっかり戻った様子にホッとする。
「ワシントンに入ったら、俺の側を離れるなよ」
「うん」
 念のためにそう注意をしておくと、貴臣は疑いもせず素直にこくりと首を縦に振る。言動も目つきもおかしいところはないのに、なんでこの人はこう凄絶になまめかしいのかと、つい溜息が出る。
「ダニエル。チャイナタウンに行ってくる。アーサーから何か連絡が入ったら、携帯のほうへまわしてくれ」
「承知いたしました」
 すでに我が物顔で屋敷の使用人たちに命令しているのも、いかにもユリらしい。アーサーからは、自分の息子だと言われているせいか、ユリの態度に異議を唱える者もいなかった。そればかりでなく、ユリの口調に当たり前のように人を従わせる力があるからだろうが。
 その様子を、どこか感心したようにロイは見つめていて、「車を頼む」とユリに促され、あっさり従っている自分に苦笑する。
「アーサーが、なぜユリ、ユリと、おまえに執着するのか、わかるような気がする。おまえは、アーサーとよく似ている」
 一緒に廊下を歩きながら、ロイに感慨深げな口調で指摘されて、ユリは「そうか?」と嘯いた。
「日本には血の繋がった親父がいて、そっちにも似てるとよく言われるがな」
「マサキ・リューゾーか。……ヤクザにしておくには惜しい男だ」
「アメリカにいたら、今頃大統領だったかもしれねーな」
 強引な野心家の父親のことをユリがからかい混じりにそう評すると、生真面目なロイは本気で嫌そうにおもてを顰めた。
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