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ENDRESS TALE

火炎の翼持つ者 黒き門より下る 7

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           ◆

「ちくしょうっ、忍者か」
 彼らを操っているのがコスモスウエブだとういことを、さっき李花から聞いたばかりだ。裏づけはまだ取れていないが、おそらく嘘ではないだろう。
 しかし、青い目の忍者というのも奇妙な気がするし、日本で襲ってきた連中は外国人には見えなかった。貴臣は、伊賀の忍の系統だろうと言っていたし、コスモスウエブと伊賀忍者にどこかで接点があるはずだ。
 反射的に柱の陰に駆け込んで身を隠しながら、手がかりにならないかとその古風な武器に指を伸ばしかけると、強い力で素早く手首を縛められた。
「触るなよ。そういうのには、大抵毒が塗ってある」
 冷ややかな声音にぎょっとして、「先に言ってくれ」と慌てて貴臣に握られた手を引っ込める。こんな時なのに妙に可愛い顔をした貴臣が「ごめん」と小さく謝るから、自分の不注意なのにと後ろめたくなった。
 それにしても、なぜ自分たちが忍者に狙われるのか解(げ)せない。東堂の家で襲われた時は、元信が目当てかとも思ったが、どうやら違ったらしい。なら、連中の目的は元信が《gate》と呼んだ貴臣の可能性が高い。
 李花は、貴臣に『火炎の翼持つ者 黒き門より下る』と言った。火炎の翼持つ者とは誰のことで、黒き門とは一体何を意味するのか。まだあまりにも曖昧すぎて、情報が足りない。できることなら元信にもう一度会って、《gate》の意味を問い質したい。
 成田で怪しげな僧侶の集団を率いた元信を見かけたから、ほぼ同時期にアメリカ入りしているはずだ。しかし、同じ搭乗機でもダラスでもそれらしい姿は見当たらなかった。別ルートを使ったということか。けれど、ワシントンで許可を得なければ、ニューヨークへ入ることはまず不可能だから、目的地は同じだろう。
 とはいえ、今は悠長に先のことなど考えている場合じゃない。先程から雨脚はいっそう激しくなって、周囲の景色を霞ませている。重く垂れ込めた雲のせいで、まだそんな時間でもないのに夕闇みたいに暗い。
 通りに面して並んだ二本の柱のうち一本にユリと貴臣が、もう一本にロイが隠れ、向かい側の建物を窺った。
 相手の殺気だけはひしひしと伝わり、背筋を冷たく這うものの、雨音や飛沫のせいで気配を読みきれない。
「何人いる?」
 自分よりはずっと感覚の鋭い貴臣に訊ねた。そして上着の内側から銃を出して、セーフティレバーをはずす。先日の襲撃で、接近戦でまともに太刀打ちできる相手ではないことはわかっていた。近づかれる前に、早めにかたをつけるに限る。
「八人、九人……十人以上いそうだな」
 雨の中へ瞳を凝らしながら、貴臣が答えた。その漆黒の虹彩に何が映っているのか、ユリには見当もつかない。
「ざっと一ダースってところか。一人で四人ずつだな」
 当然、陸軍大佐であるロイも数の内に入っている。病院でアリスを守ったというからには、それなりに役に立ってくれるはずだ。
「正面の六人は引き受ける。両側と屋根の上のやつらを頼む」
 白い指が頭上を示すから、そんなところにまで敵がいたのかと驚かされ、おもてを引き締めた。
 緊張感こそあるものの、貴臣の言葉は相変わらず淡々として気負いも怯えも感じさせない。その左手に銃、右手に缶コーヒーほどの大きさの筒が二本握られているのを見て、一体アーサーの屋敷の武器庫からどれだけの火器を持ち出してきたのかと呆れた。
「ここで手榴弾を使うのか?」
 いくら小さいとはいえチャイナタウンのど真ん中だ。一般人を巻き込みかねないと咎めると、闇の中で鮮やかに紅い唇が微笑んだ。
「これは、スタングレネードだ。殺傷力はない。ちょっと派手な爆竹みたいなものだ」
 物騒なことを平然と口にする恋人へは、確かに中華街に爆竹はつきものだがなと肩を竦めるしかない。いずれにせよ、通りへ飛び出せば危険なのは貴臣自身だ。
「爆発と同時に出る。その間はこっちも視界が利かない。目と耳を塞いで、用心してくれ」
 目と耳を塞ぎながら、どうやって用心しろというのか。無茶を言うなと抗議する前に、貴臣は向こうの柱の陰にいるロイのほうへ合図を送り、慣れた手つきで筒を投げた。
 ちょうど向かいの建物の軒先辺りで、見事な時間差になった二つの閃光が闇を裂く。まともに見たらこっちも目を潰されるから、貴臣の姿を認めることはできなかった。すぐに強烈な音と衝撃が波状に襲いかかってくる。
 貴臣に言われたとおりに顔をそむけ、耳を塞いでショックを防いだが、それでもどこか感覚がおかしい。
 相次いで聞こえてくる微かな音が銃声だと気づき、既に向こう側で貴臣が闘いを始めていることを知った。
 ふいに柱の上部を過ぎった濃紺の影に、ためらいもなく立て続けに引き金を引く。相手のスピードは、東堂家の庭で目撃している。悠長に狙いを定めている暇なんかなかった。ほとんど勘と反射神経だけで相手をとらえ、銃口を向ける。
 黄昏の色をした影が、どさりと水飛沫を上げて目の前の路上へ転がった。動かないのを確かめても、ホッとする余裕もない。下から上の敵を狙うのは位置的に不利だったが、貴臣みたいにひとっ跳びで屋根の上に飛び乗るような芸当はできないから仕方なかった。
 さらに背後の壁を伝って下りてくる影へと、振り返って銃を撃ち続けた。ロイは建物の端まで移動して、その角から路地の敵に応戦していた。姿の見えない貴臣のことが気になったが、人のことを心配できるような立場でもない。
 壁を背にして、屋根の上へと意識を集中した。予備のマガジンはあったが、プロみたいに一発必中とはいかないだけに、交換のタイミングが問題だ。
 冷やりとした空気を首筋に感じて、とっさに地面へ転がった。さっきまでユリの首があった辺りで、白刃が空を切る。そのまま方向を変えて落ちてくる切っ先を、無意識に銃身で受け止めていた。
 ガキンと火花が散る衝撃があって、銃を支えた腕が痺れる。相手は力ずくでユリの首筋まで刃を押さえ込もうとする。それをさせまいと抗い、じわじわと踵を引き寄せ蹴り飛ばすチャンスを窺った。
「ユリっ!」
 貴臣の叫び声が聞こえたが、一瞬でも気を抜けば首を刎ねられるのは必至だったから、身動ぎひとつできない。
 その時、耳に覚えのあるしゃらしゃらと澄んだ音色が聞こえ、間髪を容れずに体の上にあった重圧が凄まじいパワーに吹っ飛んだ。
「よ、う……」
「よけいなことだったか?」
 成田以来だなと横たわったまま僧形の大男に声をかけると、上から覗き込んできた仏頂面が問う。
「いや、礼を言うよ」
 助かったと正直に答え、ゆっくりと身を起こした。いつの間にか騒ぎは収まり、雨まで小降りに変わっている。
 蒼白になった貴臣が、立ち上がってスーツの埃を払うユリの腕へと飛び込んできて、ぎゅっと背中を抱きしめられた。「怪我は?」と見上げられ、「平気だよ」となだめるように微笑んでみせる。
 突然、やわらかな唇が薄く血を滲ませている首筋に触れ、傷痕をしっとりと舐めた。傷をいたわるというよりも、直に官能を刺激する仕種に、ゾクリと緊張の解けない肌がざわめく。
 確かめた闇色の双眸は、淫らに見えるほど濡れていて、自覚なしでこれじゃ堪らないとそのおもてを隠すように胸元へ引き寄せた。
 元信の背後には、成田で見た雲水姿の僧侶が三人立っている。小雨の降る路上には九人の忍者が転がっていたが、残りはどうやら逃げたらしい。
「ところで、なんで坊主がチャイナタウンなんかにいるんだ?」
 助けてもらったことには感謝するが、それとこれとは別だとわずかに視線を上げて男を睨んだ。
「偶然だとは言わん。おまえたちを追っていた」
 元信は簡単すぎるほど正直に返事をしたが、それもなんだかいかにも生真面目そうなこの男らしい気がする。わずかに一度、東堂家で会っただけだが、元信はユリに強い印象を残していた。
「俺じゃなくて、追ってきたのは貴臣だろうが……。言っておくが、こいつは誰にもやらねーぞ」
 しなやかな肢体を胸に抱いたまま、あからさまな口調で凄むユリに、元信は珍しい笑い声をこぼした。
「俺は仏に仕える身だ。そういう意味の興味はない」
 ユリの戯言(ざれごと)に、元信はらしくもない軽い調子で応じる。案外、がちがちの石頭というわけでもないらしいと屈強な僧をいくらか見直して、「信用できるか」と嘯いた。
「弁天さまも霞むほどの美人の座主さまらしいじゃねーか」
「あの方を侮辱するな」
 元信が仕える天在日輪宗の高僧のことをそうからかうと、とたんに相手は顔色を変えて怖い声音で脅す。元信ほどの男がここまで心酔しているなら、天在日輪宗の座主は噂どおり相当な人物なんだろう。あるいは、李花が言ったように、ニューヨークの闇を見通す力の主なのかもしれなかった。
 雨が上がると、騒ぎを気にして通りの両側の建物からいくつも恐々と覗いている顔が見える。
「ユリ、引き上げたほうがいい」
 それまで大人しく成り行きを見守っていたロイが、慎重に呼んだ。いくらロイでも、怪しげな忍者や坊主まで絡んだ騒ぎに巻き込まれるのは、厄介だと判断したのだろう。取調べにでも引っかかれば、ニューヨーク入りの予定も立たなくなる。確かに、軍の連中が知らせを受けて駆けつけてくる前にずらかったほうがよさそうだと、うなずいてみせた。
「ちょっと付き合わねーか。お茶ぐらいは出すぞ」
 こんなところで立ち話をするのも危険だが、せっかくここで会えたのだ。元信にはまだまだ訊きたいこともある。
 試すように気やすく誘うと、ためらうかと思った相手は、意外なほどあっさり首を縦に振った。
「いいだろう」
 どうやら情報が欲しいのは、元信も同様らしい。背後の僧たちに鋭く目配せすると、彼らはばらばらにチャイナタウンの路地へと消えていった。
 一人でついてくるとはいい度胸だと低く口笛を鳴らし、「行こうぜ」と元信を促す。
 ニューヨークへ乗り込むには、もっと細密な知識と準備が必要だ。『大切なものを見失う』――李花の警告は、胸の内に小さな棘のように残り、大胆な男の美貌を翳らせた。
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