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ENDRESS TALE

火炎の翼持つ者 黒き門より下る 8

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           ◆

 キング邸では、執事のダニエルが出迎えた。アーサーは、まだペンタゴンから帰宅できないということだった。
 貴臣と並んで歩くユリに、少し遅れてついてくる元信の厳つい横顔をちらっと窺ってから、ふと思いつく。
「話の前に、ちょっと会わせたい相手がいるんだが……」
 元信の後ろにいたロイは、すぐにアリスのことだと察したようだ。警戒した顔を向けたが、口に出して咎めはしなかった。
「ああ、かまわないが……」
 張りつめた空気に気づいたように、元信は控えめに応じる。ユリは二階へ上がる階段のほうへ向きを変えて、再び歩きだした。
 屋敷は外まわりの警戒は厳重だが、住人のプライバシーを考慮してか、内部はほとんど人影もない。二階にあるアリスの寝室の近くにも、武装した兵士の姿はなかったが、代わりに部屋の中に付っきりの家政婦が一人いた。
 執事のダニエルにしろ、このシーラという家政婦にしろ、軍隊経験があるらしく動きは機敏で無駄がない。二人とも、いかにもアーサーが好んで側に置きそうなタイプだ。
 ドアをノックすると、内側からシーラが扉を開き、ユリの顔を確かめて、「どうぞ」と中へ招き入れる。
 ユリに続いて、貴臣、元信、ロイと部屋の中に入り、背後でシーラがドアを閉ざした。いかにも若い女性の部屋らしく明るい彩で揃えられた室内には、傾きかけた陽光がまだ明るく射し込んでいる。
 貴臣には、昨夜話して聞かせただけだったから、実際にアリスを目にするのは七年振りで、懐かしさと痛みが入り混じったような瞳で、じっとアリスの寝顔を見つめた。
「俺の異父妹のアリスだ」
 ユリは、元信に向かって短く紹介した。一見しただけでは、ただ眠っているようにしか見えない。けれど、元信は何かを感じたようにその双眸の光を強くする。
「いつから眠っている?」
「かれこれ一年半になるらしい。ニューヨークで、最初のテロ事件に巻き込まれた。アリスはメトロポリタンのエジプト展示室で、こいつを握って倒れていたそうだ」
 ユリは、ベッドサイドに置かれた宝石箱から《ankh》を取り出して、元信に見せた。大きな掌で受け止めた金色の輝きに、男は鋭く瞼を細める。
「例の忍者が、そいつを狙っているらしい」
「《命の鍵》か。だが、これだけでは意味がない」
 やはり何か知ってやがるのかと、ユリは男の冷静なおもてを睨み、「どういう意味だ?」と追及した。
「忍者がこれを狙っているのは、これが《命の鍵》だと思っているからだろう。だが、俺が座主さまから聞いた話では、《鍵》も《門》も人の姿をしていると言われた」
「人の姿?」
 それもまた妙に含みのある言い方だった。まるで人の姿をしているが、人ではないというふうにも取れなくはない。だが、元信は貴臣のことを《gate(門)》だと言った。
「貴臣のことを、《門》だと言ったな?」
「ああ」
 元信ははっきりと肯定した。なぜかはわからないが、元信には確信でもあるらしい。
「《鍵》は、誰だ?」
「わからん。だが、ニューヨークにいるはずだ」
「まさか、アリスが《鍵》なんてことはねーだろうな」
「わからん」
 険しい口調で念を押すと、今度は小さく首を横に振られた。違うと言われるならよかったが、わからないというのは可能性が残っているということかと、ユリの目つきはいっそう剣呑になる。
「なんで貴臣は《門》だとわかって、アリスが《鍵》かどうかがわねんねーんだ?」
 それじゃ片手落ちじゃないかと言いつのれば、元信は困ったようにおもてを顰めた。座主でもないこの男に、何もかもを説明しろと言うのは無茶かもしれないが。
「《門》と《鍵》は、互いに共鳴するものらしい。だから、彼を見張っていれば、《鍵》を見つけられる可能性は大きい」
 貴臣のほうへ向かって、元信は静かに語った。どうやらそれで、元信たちも貴臣を追ってきたようだ。
「もし、彼女が《鍵》ならば、《門》と出会えば目覚めるはずだ」
 元信の言うことは、多少こじつけのようだが一理あった。思わずロイまで一緒になって、安らかなアリスの寝顔を見守る。だが、昨日までと変化があるようには見えなかった。
 目覚めてほしいが、それでアリスが《鍵》だとでもいうことになれば、あの忍者たちに再び狙われるだろう。それに、父親であるアーサーがどうするか。合衆国がニューヨークの秘密を手に入れたがっているのは明らかだ。
 ロイも同じ疑惑を抱えているのか、複雑なまなざしでアリスを見下ろす。その冴えたブルーの虹彩が、ふいに激しく動揺した。
「アリスっ!」
 白い毛布のかかった胸の膨らみが、明らかにさっきより大きく呼吸する。閉ざされた瞼が微かに震え、ブロンドの睫が揺れた。
 まさかと息を呑むユリの目の前で、懐かしい明るいブルーの瞳が開いていく。ぼんやりと虚ろだったそれは、真っ先に愛しい異父兄の姿を映した。
「ユーリ? あれ……どうしたの?」
「おはよう、アリス」
 あどけない妹の声で訊かれて、アリスを驚かさないように穏やかに囁いた。不思議そうな顔をしたアリスは、それを聞いて安心したように小さく笑って、何度も瞬きをする。
「ロイ……あ、タカオミもいる。あたし……どうしちゃったの?」
「長い間眠ってたんだ。気分はどうだ? 頭が痛かったりしないか?」
 まだ何も思い出せないらしいアリスは、ベッドのまわりを見まわして、一人一人を確認した。その様子では、記憶や知覚に障害はないらしいといくらかホッとする。
「痛くないけど……なんか、ぼんやりして。眠い……アーサーは?」
 大好きな父親の姿が見えないから、不安そうになる。ベッドからはすぐに起き上がれないらしく、首だけ動かして探そうとするから、そっとやわらかな金髪を撫でてやった。
「仕事でペンタゴンにいる。すぐ帰ってくるよ」
 シーラが呼んだらしく、ドアが開いて白衣姿の医者が入ってきた。この屋敷に詰めているというアリスの主治医だろう。
「医師(せんせい)に診てもらって、それからゆっくり話をしよう」
「うん」
 呑み込みの早いアリスは、自分の状態が普通ではないとすぐに理解したみたいで、大人しくユリの言うことに従った。
 ロイへ「頼む」とアリスを託して、診察の邪魔にならないように元信を促し、貴臣と一緒に部屋の外へ出る。無言のまま廊下を歩き、階下へ下りて、リビングのソファを元信に勧め、その向かいへ貴臣と並んで座った。
「目を覚ましたぞ」
 つまり、アリスは《鍵》なのかと、疑うように元信を見る。さすがに、元信のほうもまだ状況をつかみきれないらしく、難しい表情を返した。
「だからといって、彼女が《鍵》と決まったわけではない」
「そもそも、その《門》だの《鍵》だのってのは、一体何なんだ?」
 まったくわけがわからないぞと、ユリは苦情混じりに元信へ質した。李花の忠告といい、占い師や坊主というのは、はっきりと話をしないから気に食わないと声音を尖らせる。
「俺にも確かなことはわからん。一年半前、ニューヨークでテロ騒ぎの起きたちょうど一週間前に、寺におかしなものが持ち込まれてきた。持ち込んだのは、大手建設会社の技師で、ニューヨークの工事現場から掘り出されたものだという話だった」
 リビングの入り口に気配を感じて、元信が話を止めた。ダニエルがお茶を載せたトレーを運んでくる。
「アーサーは?」
「一時間後に、お帰りになられます」
 ユリが問うと、ダニエルは簡潔に要点だけを伝えた。さすがに、一人娘が目覚めたと聞いて、アーサーも仕事どころではなくなったか。あるいは、ほかに目的でもあるのかと、つい疑ってしまいそうになる。
「こっちには、しばらく誰も近づけないでくれ」
「承知いたしました」
 ダニエルは丁寧に頭を下げて出て行ったが、ここでの話がアーサーに筒抜けになるのは覚悟の上だ。元信だって、こちらをすっかり信用して話しているわけではないだろう。
「その、工事現場で見つかったおかしなものってのは?」
 コーヒーで妙に渇く喉を潤してから、ユリは元信にさっきの話の続きを促した。元信も、カップのコーヒーに用心深く口をつける。
「象形文字の刻まれた石版だ。正確には、石版の破片、というべきか」
「象形文字って、亀甲文字とか楔形文字とかか? 古いものなのか?」
 僧侶の元信はどうか知らないが、ユリには歴史の教科書ぐらいでしか見たことのない代物だ。それにしても、エジプトや中東か、中国辺りならともかく、そんなものがニューヨークの工事現場で見つかるというのもおかしな話だった。
「鑑定した学者の話じゃ、三千年以上昔のものらしい」
「盗品か?」
 すぐに思い浮かんだのは、誰かが歴史的な遺物を盗んで隠していたのではないかということだった。
「そうとも言えない。技師は、まるで古代遺跡の一部を見るようだったと掘り出した場所のことを話していた。だが、工事に関わった者は、その技師を含めてほとんど亡くなっていてな。すぐあとで、ニューヨークが封鎖されてしまったために、確かめるすべもない」
「死んだ?」
「ああ。寺に駆け込んできた時から、『カーの呪いに殺される』と怯えきっていた」
「呪い、だって?」
 テロに巻き込まれ、ウィルスに感染して亡くなったというならわかるが、呪いで工事関係者が次々亡くなるなんて考えられない。確か、エジプトの王家の谷でツタンカーメン王の墓を発掘した際、関係者の何人かが死亡したせいで呪いだと騒がれたことがあったが、それもまったくのデマだった。
 呪いだと信じた技師が寺に駆け込んだというのはつじつまが合っているような気はするが、実際、呪いで死んだとは思えない。
「忍者、か?」
「ああ。技師は、殺されたんだ」
 坊主の元信がもっともらしく呪いだと言いださなかったことには、そこまでぶっ飛んではいないらしいとホッとした。おそらく、技師は口封じに殺(け)されたんだろう。つまり、殺した相手にとっては、その石版の存在をほかに知られては不味かったということだ。
「その工事を発注したのは?」
「コスモスウエブ。忍者の雇い主だ」
 元信の回答は、予想したとおりだった。忍者の後ろにいる黒幕も、当然わかっていたらしい。だが、シーザー・ゴアは一体ニューヨークで何をするつもりなのか。
「技師が持っていた石版は、碑文の一部で、そこには《命の鍵》や《黒き門》について書かれていたらしい。専門家に解析させているが、おそらく破片から全文を読み解くことは不可能だろう」
 ようやく、話が《門》と《鍵》に戻ってきた。それがニューヨークで発見された石版の中の言葉だとしても、どうして貴臣やアリスと結びつくのか、元信は肝心のことを語っていない。
「じゃあ、なんで座主さまは、《鍵》と《門》が人の姿をしていると言ったんだ? その石版に書いてあったんじゃないのか?」
「あの方には、そういうものが見えるのだ」
 李花は闇の中を見通せる力を持つ者がいると言った。天在日輪宗の座主さまに見えたとしても不思議はない。それを信用するかどうかは、こちら側の問題だ。
 少なくとも、元信はなんの疑問もなく信じているらしい。宗教的な狂信者でもない。常識も冗談も通用する。腕は立つし、頭もいいようだ。その男が心底信じきっている相手というのに、会ってみたい気もする。
「貴臣が、《門》だと?」
「ああ。座主さまは……俺が見て、最も強く、そして美しいものを探せと言われた」
 微かに赤くなりながら口にした元信に、思わず絶句した。そして不謹慎に、腹を抱えて吹き出す。
 それで日本で道場破りまがいのことをやっていたのかと思うと、なおさらおかしかった。どうも、その座主さまというのは、なかなか洒落た人物らしい。
「そりゃ、また随分とわかりやすいな」
 傍らの貴臣に「どうだ?」と振り返ると、言われたほうも紅潮したまま居たたまれないように身を竦ませる。
「《鍵》はどうなんだ?」
 あんまり苛めると、よけい赤らんだおもての艶が増しそうで、ユリはそれ以上はからかうのをやめ、質問を変えた。
「《鍵》は、《門》と共鳴するゆえ、時が至ればおのずとわかると……」
「時が至れば……か」
 時が至って、アリスが貴臣と再会し目覚めたのかどうか、判断の苦しいところだ。できれば、アリスをこんな得体の知れない闘いに巻き込みたくはない。
「あんたは、これからどうするんだ? また、《鍵》を探すのか?」
「ニューヨークで、技師の言っていた遺跡を探すつもりだ。もちろん、《門》からは目を離せないが……」
「じゃあ、また向こうで会えそうだな」
「ああ」
 うなずきながら、元信は音もなく席を立った。そして、じっとユリを見下ろす。
「おまえたちは、どうするんだ?」
「俺は、まずチャイナタウンへ行く」
「そうか」
 わざわざ行く先を教えたのは、ここまで話してくれた元信への礼のつもりもあった。しかし、元信たちが貴臣をどうしたいのかわからない以上、気を許すこともできない。
「では」
 二人へと一礼して、元信は背中を向けて出て行く。その頑強な後姿を見送って、ユリは腕の中へ貴臣のたおやかな肢体を確かめるみたいに抱きしめた。
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