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ENDRESS TALE

夜に濡れる罪の翼 4

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           ◆

 チャイナタウンが昼間は比較的安全だということと、人数を増やせば逆に住人たちを刺激することにもなりかねないという判断から、ロイ、ケビン、グレッグ、スティーブの四人の米兵と、ユリと貴臣の六人で行動することになった。
 もちろん、身を護るための武器は必須だったが、ユリが手にしている酒のボトルに、スティーブは「なんだ?」と首を傾げる。
「手土産だよ」
「ふーん」
 デルタフォースの猛者は、ゆうべは熟睡したらしく、朝、起きてきたユリと貴臣を見ても別段その表情に変化はなかった。もっとも、本当に寝ていたかどうかは定かではない。
 準備を整えて、シティホールから目と鼻の先のチャイナタウンへは、そのまま徒歩で向かう。ジープを使ったところで、街の入り口には外部からの侵入を阻むバリケードが張り巡らされていて、住人以外が中まで車で入り込むことはできない。
 予定なら朝早くに出かけられるはずが、出発までに時間を取られたのは、ここでもまた管理区域外に出る手続きがどうのともめたせいだった。
 実際のところ、シティホールの駐留部隊は今のところ平和を保っているチャイナタウンとの間に、よけいな波風を立てられたくはないらしい。上からの命令に従うことより、ここではまず自分の命を護ることが最優先されるようだ。それも、マンハッタンに置かれた軍がいかに過酷な状況にあるかということだろう。
 そして、彼らが恐れているのは暴徒でもない。マンハッタンの闇に跳梁する化け物というのがいったいなんなのか、ユリには見当もつかなかった。よしんば、それが貴臣の言うとおり、あの忍者だったとしても、連中はこんなところで何をしようとしているんだろう。
 李花の話では、忍者を操っているのは米国最大のIT企業、コスモスウエブ社長のシーザー・ゴアだという。シーザーは、マンハッタンがテロで封鎖される以前から、ここの土地を買い漁っていたらしい。
 その目的は、ワシントンで天在日輪宗の僧、元信と話をした時に、ユリにも薄々察しがついた。
 元信から聞いた、マンハッタンの地下から掘り出されたという石版。そこには、象形文字で《門》と《鍵》のことが書かれていたらしい。それが、マンハッタンに眠る永遠の力を得るという宝の手がかりだ。おそらくシーザーは、その石版が掘り出されたという遺跡を探していたのだろう。
 ニューヨークへの移民が始まったのは、十七世紀頃からだ。それ以前は、アルゴンキンというインディアンの部族が暮らしていた。三千年前の石版が埋まる遺跡が、そんなところにあるとは考えにくい。
 眉唾だとは思うが、石版を見たという元信の言葉も嘘のようには聞こえなかった。石版は、多分マンハッタンのどこかにあったのだろう。
(忍者が探しているのは、それか……)
 マンハッタンが封鎖された後、遺跡がどうなったかは、元信も知らないらしい。僧は、まず遺跡を探すと言っていた。
 米軍も間違いなく、その辺りの情報ぐらいは手に入れているはずだろう。だとすれば、シティホールの連中が、遺跡を探していたとしてもおかしくはない。
 そして、貴臣が《門》であることは、米軍も知っている。この宝探しに関われば、いずれ面倒な事態に巻き込まれることは目に見えていた。
(ともかく、一刻も早く芙緋人を見つけることだ)
 それには、チャイナタウンとの交渉をスムーズに運ぶしかない。李花によると、マンハッタンのチャイナタウンは龍(ロン)と呼ばれる人物が取り仕切っているらしい。
 ユリの第一の目標は、その龍に接触することだった。かなり気難しい相手らしいし、すぐに芙緋人の居所を聞き出せるかどうかはわからない。
 芙緋人もまた、マンハッタンで件のお宝を探していたらしい。そして、横浜中華街の王の言うことが本当なら、マンハッタンが封鎖される直前に、お宝への手がかりを見つけていた。
 用心深い芙緋人が、それを誰にでも迂闊に洩らすとは思えない。当然、チャイナタウンも芙緋人を簡単に手放しはしないだろう。
 まるで二重三重の罠のようだと、ユリは密かに胸の中へ溜息をついた。これでは、どうでも貴臣を、ニューヨークの宝をめぐる争いの渦中に連れ去ろうとしているようだ。
 シビックセンターから通りを一本隔てれば、そこはもうチャイナタウンの入り口だった。
 スティーブたちは、外敵よけの巨大なバリケードを巧みに駆け上がり、乗り越え、大丈夫だとこちらへ合図を送る。
 まずユリが、鉄条網をよけながらバリケードにつかまり、ケビンに引き上げてもらって向こう側へと下りた。ロイが続き、最後に貴臣が軽く飛び下りてくる。
「翼でもあるみたいだな」
 軽々とした貴臣の身のこなしへ、スティーブが感心したように呟いた。見えない翼を持っているのだろうと、ユリも思う。だからこそ、この恋人はこの上なく厄介で魅力的なのだ。
 バリケードの内側には、何人かの中国人たちがいたが、侵入者に対して特に騒ぎ立てる様子もなかった。ただ警戒を宿した目が、じっとユリたちを観察している。
 見られているのは、あまり気分のいいものでもない。スティーブたちも同感らしく、「行こう」と先を促した。
 とはいえ、チャイナタウンの元締めだという龍がどういう男で、どこに住んでいるかも、ユリは知らなかった。表に出ることを極端に嫌う人物らしく、シティホールでも名前以外は誰も知らないと言われた。
 その辺のいる住人をつかまえて訊くしかなかったが、あまり好意的に見えない目つきにためらわれる。
 狭い通りを歩いていくうちに、古びたビルの階段に座っている老人を見つけ、ロイに目配せしてから側まで行って声をかけた。
「じいさん……」
 アーミージャケット姿のユリに怯えた顔色を見せた老人は、低いステップの上で凍りついたみたいに身を硬くする。
「ちょっと訊きたいんだが……この辺に龍という男が住んでいないか?」
「龍?」
 とたんに、老人の顔色が明らかに変わる。と同時に、ばらばらと背後に足音が聞こえ、どこから湧いて出たのかと疑いたくなるほど殺気立った三十人近い男たちが、ユリたちを取り囲んだ。
「道案内にしちゃ、随分大人数だな。あんたたちが龍のところへ案内してくれるのか?」
 ユリの軽口には誰一人応じず、険悪な空気を孕んだままじりじりと間合いを詰めてくる。手に持っているのは棒切れやナイフの類で、銃は見えなかった。かといって、銃を持っていないとも思えない。
 とっさに銃口を向けかけたケビンを、「よせ」とスティーブが制した。銃を撃てば騒ぎが大きくなるかもしれないと案じたのだろう。どちらにしろ、ここでは多勢に無勢だ。いくらデルタフォースの精鋭とはいえ、チャイナタウンの住人すべてを相手にはできない。
 無言でナイフを振り上げ襲いかかってきた男の腕を、貴臣が受け止め、それが合図のように乱闘が始まった。
 スティーブたちデルタフォースの三人が前へ出て、その背中へユリとロイを庇う。一応、ボディガードとしての役目を果たしてくれるつもりらしい。貴臣のことは好きにさせているのは、自分たちと同等かあるいは上の実力だと認めているのだろう。
 実際、相手は貴臣の体に指一本触れることもできずに、次々と路上にくずおれていく。動きが早すぎて、どういう攻撃を加えたのか細かいところまで見切れないほどだ。
「凄まじいな」
「ああ」
 ロイの驚嘆に、ユリは低い声で同意した。アメリカに入ってから、貴臣は自分の力をセーブすることがなくなった。これが貴臣の本来の姿なのだと、ユリも知らなかった恐ろしさとあでやかさをまざまざと見せつけられる。
 その貴臣が、急に動きを止めた。敵はすでに半分も残っていない。一見無防備にも見えそうな状態で立ち尽くす貴臣の視線の先に、こっちへ向かって走ってくる人影があった。
「あれは……」
 その小さなほうに、ユリも見覚えがあった。昨日のトラックを襲った暴徒の中にいて、貴臣が食糧を分け与えた少年だった。
 少年が、中国人たちに駆け寄り何か叫ぶと、彼らは路上に倒れている仲間を担ぎ、再び建物の陰へと姿を消していく。
 それを見届けて、少年は一緒に走ってきた小柄な男のほうへと駆け戻り、男の腕にしがみついた。
「小龍(シャオ)に食料をくださったのは、あなただったんですね。貴臣」
 男は少年の頭を撫でてやりながら、貴臣へと微笑みかけてくる。なぜ名前を知っているのかと、貴臣だけではなく、ユリやロイたちも怪しむようなまなざしを向けた。
 けれどもとりあえず、少年と男のおかげで危険は回避されたらしい。歩み寄ってくる男が、貴臣に近づく前に、ユリは遮るようにその間へと身を割り込ませた。
「おまえが、龍か?」
「いいえ。わたしは龍ではありません。楊(ヤン)と申します。どうぞ、ご案内します」
 襲ってきた連中がすぐに去っていった様子から、この男がチャイナタウンの元締めの龍かと思ったが、あっさりと否定された。
 そしてシャオと呼ばれる少年の手を引いて、ユリたちを招く。龍の居所がわからない以上、この男に従うしかなさそうだった。
 ロイを振り返ると、承知するようにうなずくから、貴臣と並んで楊の後ろへついて歩きだした。
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