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ENDRESS TALE

夜に濡れる罪の翼 5

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           ◆

 荒廃したように見えるのは、外観だけだったらしい。その建物の中へ一歩入って、ユリもロイたちも一様に息を呑んだ。
 朱塗りの柱や天井に、艶めいたランタン。回廊に囲まれた中庭には、瀟洒な橋がかかった人工の池まであった。
 周囲の瓦礫の山や、破壊の爪痕も生々しいシビックセンターの状況を見ているだけに、なおさらここがマンハッタンの中だとは思えない。ここだけを見れば、テロ騒ぎも、その後の暴動も、何ひとつなかったようだった。
 楊の手を放したシャオが、勝手知った場所らしく回廊を先に走っていく。中庭の向こうの朱塗りのドアを、その幼い手が開いた。
 開け放たれた扉の内側へ、楊に続いてユリたちが入っていく。室内には螺鈿(らでん)を散りばめたテーブルと椅子があり、その椅子のひとつに男が背中を向けて座っていた。
 走り寄ったシャオが甘えるみたいにその膝へ凭れると、白く長い指が愛しげにさらさらした黒髪を梳く。
 その背中には、チャイナタウンの住人には珍しい鮮やかな金髪が豊かに波打っている。ガウンのように身にまとっているのは、中国ではなく日本の赤い振袖だった。
 珍妙な服装は、ユリにすぐある男を思い出させ、鋭く息を呑む。傍らの貴臣も、どうやら同じことを思ったらしく、四肢を張りつめるのが気配でわかった。
 男が椅子から立ち上がると、優美な金色の光が揺れ、赤い振袖の袂がしなしなと翻った。
「ニューヨークのチャイナタウンへようこそ。ユリ、貴臣」
「亜煉(あれん)っ……」
 悪戯っぽい笑みを浮かべた亜煉へと、真っ先に駆けだしたのは貴臣だった。異父兄である芙緋人同様にその安否を気遣っていた叔父を、しなやかな両腕に抱きしめる。
 イギリス人の父を持つ亜煉は、貴臣と芙緋人の母、華火の異父弟にあたる。香港で芙緋人の組織が壊滅したあと、芙緋人を追って彼もまた姿を消した。ここで出会ったのも、偶然ではないのだろう。
「龍ってのは、おまえのことか。李花め、気難しいとか脅(おどか)しやがって。……生きていたんだな」
 肉親と再会した喜びに言葉もないらしい貴臣の代わりに、ユリは亜煉へと声をかけた。
 この喜びようだと、芙緋人に会った時が思いやられると、内心に嘆息したものの、それは口には出さない。
 だが、ユリの顔つきだけで亜煉はその想いを読んでしまったらしく、ひっそりと口元を綻ばせた。
「ああ。どうにか、あの三度目のテロからも生き延びた」
 その返答からすると、亜煉はマンハッタンが封鎖される前からここにいたということだ。チャイナタウンと芙緋人の動向を知るには好都合だった。
「芙緋人は?」
 ようやく口を開いた貴臣が洩らしたのは、やはり異父兄の行方を問うものだった。ユリに見せつけるみたいに薄い背を抱いたまま、しかし亜煉はわずかに顔色を翳らせる。
「生きている。だが……あれが芙緋人と言えるかどうか……」
「あれ?」
 いったいどういう意味かと、貴臣は無防備に間近から亜煉を見つめる。甥と叔父とはいえ、抱き合ったその格好にはユリはやきもきしていたのだが、ここで咎めるわけにもいかずに、不機嫌に目つきだけを尖らせた。
 とはいえ、思わせぶりな亜煉の口調は、やはり気にかかる。芙緋人がどうなろうと、別にユリの胸が痛むわけではなかったが、貴臣を哀しませたくはない。
「会えばわかる。しかし、《gate》が開くのは次の新月だ。それまでは……」
「《gate》――だと?」
 このところすっかり聞き慣れた単語だったが、それが貴臣の身に関わる限り聞き流すことはできない。
 険しい語気で問い質したユリに、亜煉はどうかしたのかというように、不思議そうなまなざしを返す。
「ああ。ハーレムとの間に、築かれたgateだが……?」
 貴臣の身にまつわる謎とはまた別の《gate》なのかと、ユリは亜煉の腕の中にいる恋人と顔を見合わせた。
「芙緋人は……ハーレムに?」
 けれども、亜煉の言うgateがただの門だとしても、その内容はやはり困難な事態を意味していた。確認するユリに、亜煉ははっきりとうなずいてみせる。
「ああ。ハーレムにいる」
「どうして……?」
 喘ぐように、貴臣が呟いた。縁のあるチャイナタウンに滞在していたはずの芙緋人が、今はハーレムにいるというのも妙な話だ。しかもハーレムには、現在のマンハッタンでも最も危険な連中がたむろしているらしい。シティホールの米兵たちも、ハーレムには近づくことすら嫌がっていた。
「三年ぶり、か。積もる話をするには長くなる。……お茶でもいかがかな? そちらの方々も」
 亜煉は穏やかな表情で、まだこの場の事情もわからず呆然としているロイたちを誘った。
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