スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←闇へ開く宿命(さだめ)の扉 1 →闇扉 1、2章をアップしました
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



もくじ  3kaku_s_L.png 近況
もくじ  3kaku_s_L.png WORK
もくじ  3kaku_s_L.png イベント
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ENDRESS TALE
もくじ  3kaku_s_L.png ●恋
もくじ  3kaku_s_L.png 花と牙
もくじ  3kaku_s_L.png 恋闇
もくじ  3kaku_s_L.png NOVEL
もくじ  3kaku_s_L.png アニパロ
【闇へ開く宿命(さだめ)の扉 1】へ  【闇扉 1、2章をアップしました】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

ENDRESS TALE

闇へ開く宿命(さだめ)の扉 2

 ←闇へ開く宿命(さだめ)の扉 1 →闇扉 1、2章をアップしました
           ◆

「退がれっ! 火薬の匂いだっ……」
 ドアに重ねたバリケードの一番近くにいたスティーブが、迫りくる忍者の気配を察したように警戒の声を発する。
 ユリには、とっさに傍らにいた貴臣を抱え寄せ、庇いながら床に伏せるのが精一杯だった。
 轟音とともに爆風が頭上を吹き抜け、バリケードに使っていた椅子やテーブルの破片がばらばらと周囲に散乱する。
「ユリ……」
「俺は平気だ……」
 自分の盾になってくれたユリを案じる貴臣の問いに、破片でいくつか掠り傷くらいは負ったものの、動けないような怪我はないと答えた。
「ロイと一緒に奥の壁際にいろ。俺とスティーブで忍者の侵入を防ぐ。……矢吹っ、窓を頼む」
「ラジャーっ!」
「よっしゃっ!」
 天井からもまだばらばら欠片が落ち、舞い上がった埃で十分に視界も利かない中、貴臣の指示と同時に冷静な返事が聞こえてくる。
 どうやら全員無事らしいとほっとしたが、忍者の狙いが貴臣であることは明らかだ。恐れげもなく再び戦いの中へ飛び出していこうとする恋人を留めようかと迷い、ユリは結局貴臣の意思に任せた。
 貴臣自身が危険を自覚していないはずもない。むしろ自分を餌にして、貴臣はユリたちの安全を図るつもりだろう。
 そればかりか、忍者たちが自分の何を求めて襲撃してくるのか、貴臣のほうこそ知りたがっているに違いない。
 慎重で控えめだが、決して臆病者ではない。ユリに愛され、自分から死にたがるようなことはなくなったものの、逆に大胆不敵さは増した。貴臣は、『北辰会』組長であるユリにもどんどん手に負えなくなってくる。
(まして、今回は芙緋人が絡んでる……)
 肉親への愛憎の深さは、ユリにはそのまま東堂家の業(ごう)のようにも思えて仕方がなかった。
 血の絆にとらわれているのは、芙緋人と貴臣の兄弟ばかりでない。あるいは亜煉も、小龍さえも同じことなのかもしれない。
 ユリが留めたところで、貴臣が聞き入れないことはわかっているから、腹(はらわた)は煮えるが口を閉ざすしかなかった。
 いずれにせよ、この場では自分がなんの役にも立たないことはわかりきっている。いくら命知らずのヤクザだろうと、最強のデルタフォースや神懸りの男と同じように戦えというほうが無理だ。
 ヤクザにはヤクザの戦い方があると、テーブルの残骸を盾にしつつ、潔く壁際へ後退する。
 一方、ロイも軍人としてのプライドもあるのだろう。わずかに逡巡していたが、常軌を逸した戦いの中で自分の能力の限界を悟ったように、大人しくユリの隣へと潜り込んできた。
「面目ない……」
「お互い様だ。あんたにやってもらいたいことはほかにある」
 うなだれるロイへと、ユリはまったく悪びれた素振りもなく、闇の中の乱闘の気配を窺いながら応じる。
「ほかに……?」
「ああ。忍者どもを無事片付けたら、真っ先にペンタゴンのアーサーにデルタフォースの増員を要請してくれ。スティーブと同程度の実力があれば申し分ないが、無理でもそれに近い者を選抜させろ。アーサーだって、部下を無駄死にさせたくはないだろう」
「どうするつもりだ?」
「売られた喧嘩だ。買わなきゃなるまい。あの化け物忍者どもと同等に渡り合うには、それなりの人材が必要だ」
 アーサーの力を借りてマンハッタンへ入り込むまで、ユリはできることならニューヨークの謎の力とその覇権をめぐる忍者や米軍、それに天在日輪宗の僧たちの暗闘にかかわりを持ちたくないと思っていた。
 だが現実には、貴臣はとっくにその闘争の渦中にいることを認めないわけにはいかなくなった。
 そして、ハーレムにいるという芙緋人を日本へ連れ戻るためには、ニューヨークの最も深い闇の中へ侵入しなければならない。
 人間離れした忍者に、神話の世界から抜け出してきたとしか思えないハーピー。次は何が出てくるか予想もつかない。どれだけの備えをしても、やりすぎということはないだろう。
「おまえが言おうとすることはわかるが……キング大将が応じるかどうか」
 よけい自信をなくしたようなロイの声音に、ユリは暗闇の中でひっそりと唇を綻ばせた。
「餌があれば、嫌でも応じるさ」
「餌?」
「ああ。『例の遺跡を見つけたが、忍者が邪魔をして近づけない。すぐにデルタフォースの精鋭部隊を送れ』と頼めばいい」
 頼むというにはかなり横柄な言葉と同時に、ユリは手にしたワルサーP99の引き金を暗黒へと立て続けに引いた。
 まっとうな人間には狙いを定められるような状況ではなかった。だが並外れた強運のおかげか、漆黒の向こうから近づいてきた気配がふっと掻き消える。
「ユリっ……!」
「こっちは大丈夫だ」
 悲鳴のような声を上げた貴臣に、ことさら平静に無事だと返す。修羅場には似合わない、ほっとして微笑むやさしい表情が見えるような気がしたが、もとより視界が利くような明かりなどありはしなかった。
 バリケードを破られたドアの前で、貴臣とスティーブは殺到する忍者たちと激しい乱闘を繰り広げていたが、撃ち洩らした何人かが部屋の中へも侵入してきたようだ。
 窓のバリケードを破られまいと警戒している矢吹にも忍者が襲い掛かっているらしく、凶暴な男の拳にぐしゃりと何かが潰れるみたいな不気味な音が響いてきた。
「おまえにも、忍者の動きが見えるのか?」
 動揺を隠せないロイの声色に、「まぐれ当たり」だとあっさり応じてみせた。もっとも貴臣あたりが聞けば、勘だけで当ててしまうほうが怖いと呆れられるかもしれない。
「さっきの話だが、遺跡を見つけたというのは……」
 どういう意味かと困惑するロイには、「もちろんハッタリだ」と悪びれもせずに即答した。さすがに、軍人らしく生真面目な男は絶句する。
「だがな……見当はつけている」
「本当か?」
「ああ。デルタフォースの補充ができたら、確かめに行こう」
 いずれにせよ、今の人数ではあまりにも心もとない。比較的安全だと言われているシティホールにいてさえこの有り様なのだから、さらに危険地帯へ入り込むならなおさらだ。
「行くって、どこへだ?」
「ハーレムだよ」
 芙緋人がそこにいるとチャイナタウンで亜煉に聞かされた時から、ユリはずっと疑っていた。
 天在日輪宗の僧、元信(げんしん)がマンハッタンでまず遺跡を探すと言っていたとおり、ニューヨークの謎は不可思議な石版が掘り出されたという遺跡が発端になっている。
 ニューヨークを襲った悪夢のような連続テロ事件さえ、政治的な意図ではなく、何者かが遺跡を隠蔽(いんぺい)するために引き起こしたのではないかと勘ぐれなくもなかった。
 少なくともユリは、件のテロがこのニューヨークをめぐる陰謀とまったく無関係とは思っていなかった。
 そして、チャイニーズマフィアからの依頼を受けて、ニューヨークに秘められた力の源を探っていた芙緋人が、たとえ今は別人格に操られているにしても、せっかく見つけた手掛かりから離れてしまうとは考えられない。
 安全なチャイナタウンではなく、最も危険だと言われるハーレムにいるのは、おそらくそこにニューヨークの謎を解く手掛かりがあるからに違いない。
 よしんばそれが遺跡ではなかったにしても、アーサーが求めるものの一部であることは間違いないだろう。
 その点では、芙緋人を連れ戻そうとする貴臣とユリと、アーサーの意思を実行しようとするロイやスティーブたちとの目指す場所は同じだ。
 確証もない遺跡を米軍の協力への餌にするのも、まるっきりペテンというわけではなかった。
「ハーレムに……遺跡があるのか?」
「多分な。調べてみる価値はある。それに……亜煉はハーレムに入るには、《gate(門)》が開くのを待たなければならないと言っていた」
 それもまたユリの頭に妙に引っ掛かっていた単語だった。ただの偶然というには、あまりにも思わせぶりだ。
 元信は貴臣のことをニューヨークの秘密にかかわる《gate》だと言った。元信にそう教えたのは、彼が深く崇拝する宗門の座主である天如だという。
 このマンハッタンに眠るという巨大なエネルギー。制御できない不安定なパワーが時空の歪みを生み、そこからハーピーたちが次元を越えて現れるのだと、矢吹は説明した。
 さらにその矢吹の体を借りてユリたちに語りかけてきた天如は、ハーピーとは桁違いの強力な化け物を呼び出すために《黒き門》が必要なのだと告げた。
 天如の言う《黒き門》と《gate》は、ほぼ同じものと考えられる。だとすれば、貴臣はそのとてつもない化け物をこの世に出現させるなんらかの鍵なのかもしれない。
 とはいえ、そんな化け物をニューヨークに召喚して、いったい何をしようというのだろう。
 米軍や忍者を操っているという合衆国きってのIT企業の会長であるシーザー・ゴア、それにチャイニーズマフィアたちの狙う、ニューヨークに秘められた《永遠の力》というのが、もしもその化け物のことなら、ユリにはあまりにも馬鹿げているとしか思えなかった。
「《gate》……か」
「ああ、どんな《gate》か、見てみたいと思わないか?」
 芙緋人と貴臣。どこまでも相反しながら、またどこまでもよく似た兄弟のどちらも《gate》と繋がっている。
 ここまで話ができすぎているなら、芙緋人がもうひとつの謎である《生命の鍵(ankh)》だったとしても不思議はないようにさえ思えてくる。
 かといって、《門》と《鍵》が揃えば、そこから何が出てくるのかなど、ユリは想像したくもなかった。
 ましてや、化け物の贄に選ばれた美しい兄弟の運命など、昔話の結末で散々聞かされている。もっとも、昔話の場合、たいていは美人の姉妹なのだが。
 場所がニューヨークなら男でもかまわないのかとくだらないことを考えていると、すでにハーピーたちに破壊されていた窓ガラスが、再び轟音とともに室内へ飛び散った。
「……っつ。矢吹っ?」
 ガラスの破片で擦ったのか、左の目の下に微かだが鋭利な痛みを感じる。どこからか濃厚な血の匂いが漂ってきて、真っ先に案じたのは、貴臣ではなく窓際にいた矢吹のことだった。
「やばいっ。……手に負えねーのが出てきやがった。逃げろっ!」
 しわがれた警告の声を上げた矢吹が、大怪我を負っているらしいことは察しがついた。しかし、天如と同調しているという男にとって生身の傷がどれほどのダメージなのか、ユリにはわからない。
 現に絶え入りそうな声音とは裏腹に、矢吹は忍者の群がるドアめがけて脱兎のごとく走りだす。忍者よりもずっと手強い相手が、窓から侵入してきたらしい。
 だが、人間離れした忍者にもあれほどの圧倒的な力を見せつけた矢吹が、一目散に逃げだす相手がどんな怪物なのか、ユリには見当もつかなかった。
 ただ何か凄まじい気配だけは確かに感じて、氷の塊にネジ込まれたみたいに一気に全身が総毛立つ。
 巨大な黒い翼が、ほのかな月明かりに闇よりも色濃い影を落としていた。それを見れば、ハーピーと同じように空からやってきたものだとわかる。
 だとしても、ハーピーとはまとう空気がまったく違う。伝わる大気がびりびりと震え、気のせいではなく確かに冷気が室内どころか広大な建物すべてを押し包んでいく。
 この強烈な鬼気を浴びて、即座に逃げられた矢吹はやはり人並みではなかった。怖いもの知らずのユリでさえ、呑まれたように両足が床に張り付いて離れない。傍らにいるロイも同じような状態だろう。
(貴臣っ……)
 せめて愛しい恋人だけは、矢吹同様に逃げ延びてほしいという祈りも虚しく、跡形もなく吹き飛ばされ、窓どころか壁の原型すら留めていない表から淡く射し込む月光に有翼の巨人のシルエットがぼんやりと浮かび上がる。
 その意外なほどゆっくりと歩み寄っていく先には、ほっそりとした青年の麗姿があった。
 貴臣もまた相手の発する恐ろしいまでの気配に、圧倒されているかのようだった。
 蒼白の頬にかかるやわらかな薄茶の髪は、忍者との激しい戦闘にもほとんど乱れさえ感じさせない。
 一見無防備に体の両側に沿わされたしなやかな二本の腕が、どれほど危険な殺人兵器に変わるかを知る者は少ないだろう。
 肌の色は、薄青い月の光に透きとおりそうに白く、まっすぐに翼を持つ男を見上げる瞳は、その翼が抱く闇の色よりも惹き込まれそうな底なしの漆黒だった。
 無彩色の中に、小さな唇の色だけが鮮烈に紅く、甘く妖しく誘うみたいな艶を滲ませる。繊細に整ったおもてもまた、太陽の光の下ではなく月下に花咲く夜の眷属だ。
 そういう自分の魅力について、貴臣が頑なに自覚しようとしないのは、過去に受けた精神的な傷のせいもあるのだろう。
 しかしユリにしてみれば、自分を見つめる男や女にすら無関心な貴臣はどうにも危なっかしくって見ていられないことがある。
 現に今だって、得体の知れない化け物にも濁りのないまなざしを怯みもせずに向けるから、はらはらしながら見守るユリのほうが心臓に悪かった。
 陰になった化け物のおもてが、そこに表情などあるのならば、にやりと笑ったようにも感じられ、嫌な予感が胸を灼く。
 化け物の身長は二メートルを軽く越えているだろう。大男のスティーブよりさらに頭ひとつ半ほど大きく見えた。
 その背を包み込む翼は、広げればゆうに十メートル近くありそうだ。
 体はハーピーのような羽毛に包まれているわけではなく、ちょっと古めかしい式典ででも見られそうな黒く優美な礼服姿なのが、ユリにはよけい気に食わなかった。
 シルエットだけしか見えない横顔も、どちらかといえば端整な造作に思え、一つ目やのっぺらぼうではなさそうだ。艶々とした黒髪が襟足にかかっている。
 間近にいる貴臣の位置からは、ちゃんと化け物の顔だって見えているのだろうが、静かな面貌からはどんな感情も読み取れなかった。
 巨体の腕が無造作に貴臣の華奢な肢体へとまわされる。とっさに抗いかけた貴臣は、忍者相手に戦っていた時のような体のきれもなく、まるで催眠術にでもかかったみたいにひどく不自然に力を失い、その手に落ちた。
「貴臣――っ!」
 二度と目の前で愛する者を奪われたくない。激しい想いが反射的に呪縛を解き、ユリは貴臣を腕に抱いて身を翻す黒い翼の巨人へと駆け寄った。
 真正面から睨んだ男の顔は、予想どおり嫌みなほどの完璧な美貌だったが、そんなことは貴臣の危機の前ではどうでもよかった。
 やけに人間くさく嘲るみたいにユリを見下ろした化け物は、手を掛けることも煩わしいというかのように禍々しい黒い翼を一振りした。
 自分に何が起こったのか、ユリには理解できなかった。その前に、意識を飛ばしてしまったことこそが強運だったのだと、ユリが理解するのはまだ当分先のことだった。
関連記事
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png 近況
もくじ  3kaku_s_L.png WORK
もくじ  3kaku_s_L.png イベント
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ENDRESS TALE
もくじ  3kaku_s_L.png ●恋
もくじ  3kaku_s_L.png 花と牙
もくじ  3kaku_s_L.png 恋闇
もくじ  3kaku_s_L.png NOVEL
もくじ  3kaku_s_L.png アニパロ
【闇へ開く宿命(さだめ)の扉 1】へ  【闇扉 1、2章をアップしました】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【闇へ開く宿命(さだめ)の扉 1】へ
  • 【闇扉 1、2章をアップしました】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。