スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←闇へ開く宿命(さだめ)の扉 3 →闇扉 3、4章をアップしました
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



もくじ  3kaku_s_L.png 近況
もくじ  3kaku_s_L.png WORK
もくじ  3kaku_s_L.png イベント
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ENDRESS TALE
もくじ  3kaku_s_L.png ●恋
もくじ  3kaku_s_L.png 花と牙
もくじ  3kaku_s_L.png 恋闇
もくじ  3kaku_s_L.png NOVEL
もくじ  3kaku_s_L.png アニパロ
【闇へ開く宿命(さだめ)の扉 3】へ  【闇扉 3、4章をアップしました】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

ENDRESS TALE

闇へ開く宿命(さだめ)の扉 4

 ←闇へ開く宿命(さだめ)の扉 3 →闇扉 3、4章をアップしました

           ◆

「ハーレムに悪魔信仰の連中がたむろってるって情報を手に入れたのは、つい一昨日のことなんだ」
 先導するように前を歩く矢吹からそう言われ、ユリは事情通に思えた男がニューヨークに来てわずか一週間しか経っていないことを思い出した。
 それなのに、男はもう二、三十年もここで暮らしてきたみたいに廃墟の街に馴染んでいた。あるいはニューヨークという人種の吹き溜まりでもあるこの街は、男のホームグラウンドの新宿とどこか似たところがあるのかもしれない。
 情報収集の能力に長けているのは、刑事という職業柄でもあるのだろう。権力に媚びることはないが、自分の立場とのバランスも心得ている。
 おそらく天如にとって、これほど好都合な人間はいなかったはずだ。だが矢吹の言う半分でも天如がこの男のことを想っているなら、自分の身代わりに恋人を危険な場所へ送り込むことを苦しんだに違いない。
「だからって、悪魔がハーレムにいるって考えるのは早計じゃないのか」
 背後から異議を唱えながらも、ユリは男の後ろに従うように歩いていく。しんがりは、外出許可の下りなかったスティーブの代わりにロイが務めた。
 ユリはどっちでもよかったのだが、やはりロイにだって軍人としてのプライドがあるのだろう。
 その点、ヤクザは気が楽だった。おかげでユリは自分の目的だけを考えていられる。
 貴臣の行方と安否。《gate》の謎。ハーレムの謎。考えるべきことはいくらでもあった。ただ、どれも情報が少なすぎる。かえっておかしな先入観を持たないように気をつけることが、せいぜいではあったけれど。
「だがな、悪魔ってのは昔から人間と契約を交わしてこの世に現れる。そういう習性は、案外変わらないものらしい」
「誰かが悪魔を呼び出したってのか?」
「だからそれが、資質の問題だってことだ。大物を呼び出すためには、それなりの資格とリスクが必要になる」
 悪魔よりも人間の犯罪者を追いかけているほうが、よほど似合いの男だ。全部、天如からの受け売りだとしても、ここへ来るまでに付け焼き刃の知識を相当詰め込まれたようだ。
「そんな資格のありそうなヤツが、ハーレムにいたのか?」
 眉唾な話だと不審を隠さないユリに、振り返った矢吹がいかにも楽しそうにニヤリと笑った。
「いたんだよ。大都会ってのは面白いな。ローマ法王庁が長年目をつけていたヤツらしい」
「もしかして、座主様ってのは法王庁ともツーカーなのか?」
 わずか九歳で座主の地位に上ってからも日本の秘境と言われる山奥に引きこもり、滅多に下界にさえ下りてこない謎の多い青年僧は、一方ではその山深い本山に全国の政治家たちが日参していると噂される宗教界の大物だ。
 一説には、天在日輪宗は《呪詛(じゅそ)》を得意とするとも言われているが、宗門内に超近代的な専門の諜報機関を持ち、実際には政治的な工作も、妖しげな呪文ではなくその組織を通じて行われているらしい。
 そして、件の諜報部門を統括しているのが、元信という警視庁第6機動隊特殊急襲部隊(SAT)出身の男だった。テロ対策部隊であるSATは、警察というよりもより軍隊に近い。
 元信を始めとする諜報部門の僧たちもまた、矢吹とは別にマンハッタンに潜入し、今は遺跡を探しているはずだ。
 政教分離が基本でありながら、実は日本の政界を陰で支えていると言われる宗門だから、カトリックの総本山とだってかかわりがあって不思議はない。そう訊ねたユリに、矢吹はなんの感慨もない顔つきでうなずいた。
「ああ。枢機卿の何人かとはメル友らしい……あいつ、案外オタクだからな」
 恋人の素朴な評価は、《空海の再来》と言われる天才密教僧の神秘性もありがたみも何もない。
 確かに、秘境にこもって修行する僧侶はある種のオタクと言えないこともないだろうがと、ユリはがっくり肩を落とした。
「で、その法王庁が監視していたって危ねーヤツは、何者だ?」
「ジョニー・オズワルドって男で、神父という触れ込みでハーレムの潰れかけた教会に住みついていたらしい。だがもちろん、叙階(じょかい)を受けた本物の神父じゃない。そして、オズワルドが現れて以来、教会のまわりでは行方不明者が相次いでいた」
「行方不明者ぐらい、ハーレムじゃ特に珍しいことでもないだろう。そのオズワルドに不審でもあったのか?」
 法王庁が目をつけるにしては、偽神父も行方不明者も根拠が薄いと、ユリは矢吹に疑問を返した。
「まあな。オズワルドってのは元々ローマで神学を学んでいた神父の卵だったんだ。それもとんでもねー金の卵で、小さな頃から神童と呼ばれていたらしい。だが、ある事件をきっかけに、ヤツは神学校を放校された」
 どうだというように上体を捻った矢吹からおもてを覗き込まれ、ユリにもなんとなく話の先が見えてきた。
 頭の切れすぎるヤツというのは、往々にして異端に走りたがるものだ。ユリが知っている中にも、一族ほぼ全員が医者で、自身も医大をドロップアウトしてわざわざヤクザになった物好きな男がいる。
 その男も悪魔的に頭がよかった。今は、『正竜会(しょうりゅうかい)』次期組長であるユリの異母兄の右腕だ。
「ヤツは黒魔術にはまったんだ。禁書になっている古い文献を漁り、取り憑かれたみたいに奇跡を起こすことに執着した。そして、幼い少年を悪魔の生け贄に捧げて、神父になる資格を失った」
「なるほどな」
 過去に法王庁の膝元でそんな事件を起こしていれば、警戒されたとしても不自然さはない。
「オズワルドは、日中は教会にこもり、夜になると出歩いてハーレムのあっちこっちを掘り返していたらしい」
「おい、それは……」
 矢吹の話は、ようやく核心へと近づいてきた。オズワルドがハーレムで探し求めていたものとは、おそらく例の遺跡に違いないと、矢吹を追うユリの足取りは速くなる。
「ああ。オズワルドは多分、どこかで遺跡がハーレムにあることを嗅ぎつけて、マンハッタンに住みついたんだ。そして、報告を受けた法王庁もオズワルドの目的に気づいた」
「法王庁は、オズワルドを追っていて遺跡の存在を知ったのか?」
「さあな。天如もニューヨークに力場があることは感じていたぐらいだから、法王庁が何も知らなかったとは思わない。ただ、オズワルドのようにその力を狙う者が現れたことを憂慮しているらしい」
 憂慮というのがどういう意味かは、ユリには怪しく思えた。遺跡に眠る秘密を法王庁が手に入れたがっていると考えるほうが簡単だ。
「オズワルドは、本当にあれを呼び出したと思うか?」
 あんなものを、果たして人間が契約で使役できるのか、ユリにはそのほうが気になった。魔法陣から解き放たれた瞬間、呼び出した者を殺しかねない。
「それも確かめてみるしかねーさ。だが、悪魔信仰の集団ってのは引っ掛かる」
「ああ」
 遺跡がハーレムにあるという矢吹の話は、ユリの予測とも合致している。ニューヨークと《gate》の謎に遺跡が大きなかかわりを持つなら、化け物に拉致された貴臣の行方をハーレムに絞るのも見当違いではあるまい。
 しかし、チャイナタウンで亜煉からも聞かされたように、ハーレムには新月の夜にだけ開くという《gate》からしか入れないらしい。
 それもユリには奇妙に思えた。ひとつしかない入り口から入っていけば、ハーレムにたむろするというならず者たちに狙われるのは確実だ。そんな危険を冒してまで、なぜ《gate》にこだわるのだろう。
「ハーレムに、《gate》以外の入り口はないのか?」
「俺もまだ実際に見てきたわけじゃねーが、話に聞いたとおりなら、ハーレム自体が一種の異空間になっているんじゃないかと思う。ほかの入り口を探せないこともないだろうが、よほど能力を持った者じゃないと、異界で迷って二度とこっちに戻れなくなるかもしれねー」
 次元の漂流者になると脅されれば、試してみる勇気はユリにはなかった。だが矢吹の言い方では、ハーレムの住人たちはオズワルドも含め全員が異界にいるということになる。
 そんなところで、人は普通に生活できるものなのだろうか。水や食糧はどうやって調達しているのだろう。住人たちもまた、《gate》からしか出入りできないのだろうか。
 疑惑は限りなく浮かび上がってくるが、矢吹もハーレムの内部の様子を知らないというのだから、問うこともできなかった。
「あれか?」
 逆に矢吹のほうが歩みを止め、『青蓮閣』という看板の掛かった建物を指差してユリに訊く。同時に建物からも、ユリたちを見つけて小龍が駆け出してきた。
関連記事
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png 近況
もくじ  3kaku_s_L.png WORK
もくじ  3kaku_s_L.png イベント
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ENDRESS TALE
もくじ  3kaku_s_L.png ●恋
もくじ  3kaku_s_L.png 花と牙
もくじ  3kaku_s_L.png 恋闇
もくじ  3kaku_s_L.png NOVEL
もくじ  3kaku_s_L.png アニパロ
【闇へ開く宿命(さだめ)の扉 3】へ  【闇扉 3、4章をアップしました】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【闇へ開く宿命(さだめ)の扉 3】へ
  • 【闇扉 3、4章をアップしました】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。