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ENDRESS TALE

闇へ開く宿命(さだめ)の扉 6

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           ◆

 ハーレムで起きた乱闘騒ぎで犠牲になったのは、四人の僧と近くにたむろしていたその三倍近い若者たちだったらしい。
 偶然付近を通りがかって目撃したチャイナタウンの住人の話では、僧たちは仲間の亡骸を抱えてハーレムのはずれのほうへと立ち去ったらしい。
 あとに残された暴徒たちの亡骸には、血の匂いを嗅ぎつけたハーピーが群がり、彼はほうほうの体で逃げ戻ったそうだ。
 男はハーレムの近くでも時々食糧を売り歩いていると聞いて、ユリは悪魔を信仰する集団のことを訊ねてみた。
 確かに、《gate》が開く新月の夜に限ってその辺りで行方不明者が相次ぎ、今では新月の夜にはどの家も固く扉を閉ざし、外出する者も誰一人いないらしい。
 元々テロのあとは、一時再開発などで上向きかけていた治安がいっそう悪化し、夜に出歩く物好きなど滅多にいなかったらしいが、閉じこもっている家の中から一家がまるごと消えることも珍しくはないという話だった。
 彼のお客の家でも、三カ月ほど前に五歳の男の子が眠っていたベッドから忽然といなくなり、両親は半狂乱で探しまわったけれど発見されなかった。
 消えた人々がハーレムに連れ込まれ、悪魔の生け贄にされているというまことしやかな噂が流れ始めたのも、マンハッタンの封鎖からどれほども経たない頃らしい。
 コスモスウエブが発掘していたという遺跡を、オズワルドは見つけたのだろうか。そして、本当に悪魔を呼び出したのか。
 誰がなんの目的で呼び出したのであれ、マンハッタンに悪魔と言われるものがいることは、貴臣を連れ去られたユリだって知っている。
 貴臣を悪魔の手から取り戻すためには、圧倒的な力を持つ相手の弱点を見つけるしかない。
 悪魔の名前がわかれば、その性質や弱点もわかるという矢吹の言葉に、ユリは一縷の望みをかけていた。
 ハーレムの中に悪魔を信仰する者たちがいるというのは、ある程度信憑性がありそうだった。そこからオズワルドを見つけだす手掛かりを得られるか、あるいは悪魔の名前がわかるかもしれない。矢吹に言わせれば、悪魔は簡単に名前を明かさないらしいが。
 こんなことを考えていてさえ、ふと自分の頭がおかしくなったのではないかと思うことがある。
 ハーピーが死肉を漁り、忍者が暗躍し、悪魔が夜を支配するマンハッタンは、まさに悪夢の世界だった。この街こそが、矢吹の言う異界そのものではないかという気がしてくる。
 チャイナタウンの『青蓮閣』で亜煉に別れを告げ、ユリたちは龍の人格に変わったままの小龍を連れて、いったんシティホールへと戻った。
 ハーレムへ向かうなら、それなりの装備も必要だ。火器類を運ぶなら機動性のいいバイクを使ったほうが移動も速いだろうというのが、ロイの意見だった。
 矢吹のように空を飛ぶわけにもいかないユリたちは、確かに移動にも手間取らされる。体は子供の龍を連れていればなおさらだ。
 バイクと武器はロイが調達してくれることになり、その間、ユリと矢吹は龍からハーレムに関する情報を仕入れることにした。
 それに、身内である亜煉や小龍からは訊きにくかった芙緋人の現状も、意識的にはまったく他人らしい龍ならためらいも少ない。まして今は、一番動揺しそうな貴臣もいない。
 それ以前から半ば崩れかけていたシティホールの優美な建物は、昨夜の悪魔の襲来でさらに破壊の爪痕も生々しかった。
 ユリたちは、まだ床や壁が原型を留め、米軍が即席の補強を済ませたばかりの部屋に移動して、遅い昼食を取りながら、龍の話に聞き入った。
「じゃあ、ハーレムの内部に入ったことはあるのか?」
「ああ、亜煉が芙緋人に会いに行く時に、何度か連れて行ってもらった」
 ユリの問いに、龍がこくりとうなずく。亜煉が伴っていってのは、もちろん芙緋人の息子である小龍のほうだろう。
 その辺の意識はどうなっているのだろうとふと疑問に思ったとたん、矢吹が先に口を出した。
「なあ、俺は天如が出てくる時、ほとんど自分の意識はないか、夢の中で見てるようなぼんやりした状態なんだが、あんたは小龍の時、意識ははっきりしてるのか?」
「ああ、わたしの場合はおよそのことは覚えている。小龍が眠ったり、逆にひどく興奮している時はよくわからないこともあるが……」
「そりゃ、便利だな……」
 自分の体を使っている恋人の行動が逐一気になるらしい矢吹は、ひどくうらやましそうな声を洩らす。
「そうかもしれない。だが、自分の望んだ時に意識が入れ替わることができないと、もどかしく思う時もある」
「自由に入れ替われないのか?」
 矢吹が天如に変貌した時も唐突だったが、どうも彼らの入れ替わりに関しては天如にコントロールされているようなものを感じさせられた。
 龍と小龍の場合には、制御することはできないのかと、今度はユリが質問する。
「お互いに試してみたことはあるんだが……どういうきっかけで入れ替わりが起こるのか、決まったパターンもないらしい」
 気紛れに変貌が起こってしまうのだと龍は苦笑するが、それでは不都合なこともあるだろうと、少々この男に同情したくなった。
「芙緋人も別人に変わったって?」
 わき道にそれてしまった話をもとに戻しつつ訊ねるユリに、龍は彼には珍しく曖昧に首を縦に振る。
「芙緋人の場合、変わるというのかどうか……」
「どういうことだ?」
「彼に別人格が現れたのは、あのテロ事件の直後だった。それ以来、わたしは以前の芙緋人に会ったことはない」
 横浜の王が芙緋人がウィルスに侵されていると話したのは、あるいは人格の変貌のせいかもしれなかった。
 第一、ユリはマンハッタンに入ってから一度もそれらしい病人に会ったことはない。おかしいのは人間ではなく、夜空を飛びまわるハーピーや人をさらっていく悪魔のほうだ。
「わたしと小龍の場合と芙緋人とでは、まったく状況が異なる。あれではまるで……別人に意識を乗っ取られてしまったみたいだ。それこそ、矢吹が言った悪魔でも憑いたみたいに」
 ユリは反射的に、龍と一緒になって矢吹のほうを見た。無精髭を蓄えた男も、考え込むような表情になる。
「そりゃ……本物の悪魔が憑いたのかもしれねーな」
 貴臣は悪魔にさらわれ、異父兄の芙緋人は悪魔に取り憑かれているというのも奇妙な話だ。まるで、悪魔は東堂家の血筋を狙っているようにすら思えてくる。
 だがまだ、芙緋人の変化がそうと決まったわけではなかった。大体、芙緋人は元から悪魔みたいなヤツだったと、ユリは疑念も隠さない。
「凶暴になったのか?」
 以前以上にと、暗い面持ちを向けたユリに、龍は「むしろ逆だよ」とそれを静かに否定した。
「芙緋人はなんとか亜煉から小龍を取り上げて、すぐに殺そうとしていた。しかし人格が変わってからは、小龍を傷つけようとすることはなくなった」
「やさしくなったと……?」
「そうじゃない。……穏やかにも見えるが、身内も含めて人間そのものに興味を失ったように思えた。冷たくて、どこか人間離れしたような」
 龍の言うことは、そのまま見覚えのある冷酷でぞっとするほど美しい横顔に重なった。
「東堂家の《夜叉》……か」
 鬼か悪魔か、どういう呼び方をされようと彼らは人を超越した存在であり、邪悪なものと畏怖される。ただ、邪悪と決めつけたのは人間のほうで、彼らにとってはそれがあるがままの姿なのだろう。
 貴臣が人とはかけ離れた《夜叉》に変わってしまうことを引き留めていたのは、ユリへの強い想いだったのかもしれない。
 芙緋人と貴臣は表裏一体だ。小龍と龍とは逆に、まるで二つの体にひとつの魂が宿ったかのようだった。
 だから互いにひとつになりたくて惹かれ合い、もう一人の自分を否定するかのように憎しみ合い、求めながら傷つけ合おうとする。
 それがわかるから、貴臣を芙緋人と会わせたくなかった。互いを思いながら遠く離れているほうが、貴臣にとっては幸せだと思ってきた。
 悪魔憑きなどではなく、ユリは芙緋人の変貌を東堂家の本質ではないかと疑っていた。憑依より、やはり解離性同一性障害に近い。
 だが、もしもそれが本質であるならば、より強い人格のほうが勝利を収めることは不自然ではないだろう。芙緋人がもとの芙緋人に戻ることはないかもしれない。
 ただ、すべての人間への愛憎や興味を失ってしまったとしても、芙緋人の貴臣への執着まで消え去るとは思えない。むしろ、同じ性を持つゆえに、いっそう執心は深まるのではないだろうか。
「芙緋人は、ハーレムで何をしているんだ?」
「問い質しても教えるような芙緋人ではないが……おそらく、何かを探しているのではないかと思う」
 龍の返事で、ユリは確信した。やはり、芙緋人はハーレムで遺跡を探しているのだ。コスモスウエブが石版を掘り出したという遺跡なのか、それともほかにも遺跡があるのかもしれない。
 いずれにせよ、横浜の王が芙緋人に依頼したニューヨークに眠る《永遠の力》を手に入れる鍵が、その遺跡に秘められていることは間違いないだろう。
 そして貴臣がニューヨークの秘密に大きくかかわっていることを、芙緋人は果たして知っているのだろうか。
 もしかしたら、王を通じて貴臣をニューヨークに呼び寄せようとしたのは芙緋人自身ではないのかとすら、疑えば疑える。
「探してる、ってことは、芙緋人はまだその何かを手に入れていないのか?」
「手に入れていたら、ハーレムなんかで大人しくしている芙緋人ではないだろう。彼は、きっと待っているんだ。自分がそれを手に入れるべき時が来るのを……」
 さすがに小龍の体を共有するだけあって、龍はその父親である芙緋人の性格を心得ていた。
 言われてみればそのとおりだろうと、ユリも納得させられる。目的に対する行動が機敏なのも、意外と執念深いところも、実は芙緋人は貴臣と性格までよく似ているのだ。
 二人の性格が大きく違うように思えるのは、育った環境のせいで物の価値観が正反対なだけのことだった。
 愛に殉じようとする貴臣と、愛を否定して背こうとする芙緋人。けれど、その二人は互いを何よりも深く愛し合っていた。
 ユリが芙緋人をことさら警戒するのは、あの男ならばいつか自分から貴臣を奪っていくかもしれないという不安が常にあるからだ。まさかその前に化け物にさらわれてしまうとは、予想もしなかったことだけれど。
 とはいえ、あの化け物と芙緋人がつるんでいないという保証もまったくなかった。何しろハーレムは、今や悪魔信仰の本拠地らしい。ハーレムのならず者たちに君臨していると聞かされた芙緋人が、どこで関係を持っていないとも限らない。
 案外、悪魔に関する情報を聞き出すなら、芙緋人を捕まえたほうが手っ取り早いかもしれなかった。
 それに、芙緋人はひょっとしたらすでにニューヨークの秘密を解き明かし、《gate》である貴臣がやってくるのを待っているのかもしれない。
 いずれにせよ、ハーレムで芙緋人に接触しないわけにはいかないはずだ。ユリにとって、芙緋人は悪魔と同じくらい厄介な相手だった。もっとも龍の言うとおり、今では悪魔そのものなのかもしれなかったが。
「次の新月は、明後日だ」
 悪魔に連れ去られた貴臣の身にどんな危険が迫っているともわからない。明後日を逃して、次の新月まで呑気に待つような時間はユリにはなかった。
「できれば今日中にハーレムの近くまで行って、付近の様子を確かめておいたほうがいいだろう」
「ああ。……元信たちのことも気に掛かるしな」
 矢吹の提案に、ユリもすぐに同意した。ハーレムへの侵入に失敗したらしい元信たちが、新月までの間近くに潜んでいる可能性は大きい。矢吹も仲間の安否を知りたいに違いない。
「すまないな……」
 ユリの心遣いを察したように矢吹が頭を下げるから、「お互い様だろう」と淡い笑みを返した。
 いくらニューヨークの力場のバランスを守るように天如から頼まれているとはいえ、貴臣をさらわれたユリに付き合ってハーレムに乗り込む義理など矢吹にはどこにもない。
 矢吹には、彼なりの考えも事情もあるのだろうが、デルタフォースの補充も待てない今、正直矢吹の協力はありがたかった。
 ドアに短いノックの音が聞こえ、ロイが顔を出す。部屋に入ってきたその背後には、スティーブの長身が従っていた。
「おい、大丈夫なのか?」
「ああ、十分休んだ。別に大した怪我じゃない」
 体を気遣ったユリに、スティーブは静かに応じる。冷静な口調が、この男の場合はひどく頼もしかった。
 しかし、失血多量で輸血を必要とするような怪我が、スティーブにとってどの程度のものなのかはユリにはわからなかったが、すぐに百パーセントの力を出せるというわけにはいかないだろう。
 かなり戦力を削がれることは覚悟しなければならなかったが、それでもスティーブが同行できるかどうかでは格段の違いがあった。
「装備の用意ができた。それから、ワシントンのキング大将と連絡が取れた。すぐにメンバーを選抜してマンハッタンに派遣してくれるそうだ」
「食いついたか……」
 遺跡の餌が功を奏したらしい。しかし、オズワルドや芙緋人に関する話を聞いていると、口実ではなく、実際にハーレムに遺跡がある可能性が高くなってきた。
 だが、遺跡の謎や《永遠の力》などユリにとってなんの価値もないことは変わりない。目的は貴臣を化け物の手から奪い返すことだ。
(大切なものを見失ったりしない……)
 ワシントンで李花から受けた警告を、ユリは胸の中に深く刻み、「出発しよう」と一同を促した。
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