スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←闇へ開く宿命(さだめ)の扉 6 →闇へ開く宿命(さだめ)の扉 8
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



もくじ  3kaku_s_L.png 近況
もくじ  3kaku_s_L.png WORK
もくじ  3kaku_s_L.png イベント
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ENDRESS TALE
もくじ  3kaku_s_L.png ●恋
もくじ  3kaku_s_L.png 花と牙
もくじ  3kaku_s_L.png 恋闇
もくじ  3kaku_s_L.png NOVEL
もくじ  3kaku_s_L.png アニパロ
【闇へ開く宿命(さだめ)の扉 6】へ  【闇へ開く宿命(さだめ)の扉 8】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

ENDRESS TALE

闇へ開く宿命(さだめ)の扉 7

 ←闇へ開く宿命(さだめ)の扉 6 →闇へ開く宿命(さだめ)の扉 8

           ◆

 ハーレムはマンハッタンの最北に位置し、テロ事件による封鎖以前は大きく三つの地区に分かれていた。
 黒人の多いのが『セントラル・ハーレム』、その東にプエルトリコ系が住む『スパニッシュ・ハーレム』、アムステルダム・アベニューから西にはドミニカ共和国の出身者が多く暮らす『ウエスト・ハーレム』がある。
 三つの地区は通りによってほぼ区別されていたのだが、当然、ここにもテロの混乱と暴動が起こり、通りや建物の多くは破壊されたまま放置されている。
 いつの間にかその廃墟に、暴徒の中でも最も凶悪な連中が住みつくようになったらしい。
 そして、『スパニッシュ・ハーレム』との境界だったレキシントン・アベニューに、《gate》と呼ばれる巨大な門とハーレムを包み込むように防壁が築かれてから、すでに一年以上が過ぎていた。
 龍の話では、《gate》の建設は芙緋人がハーレムに移り住むようになって以降、急ピッチで進められたらしい。芙緋人がそれを作らせたことは、ほぼ間違いなかった。
 不思議なことに、当初はマンハッタンを南下してきては暴行と略奪を繰り返していたならず者たちが、《gate》の建設後はずっと大人しくなったそうだ。
 無論、新月の夜しか《gate》は開かないのだから、外から侵入することが難しいように、ハーレムの住人たちが外へ出ていくことも難しいのかもしれない。
 矢吹は、ハーレムを異界だと言っていたが、そびえ立つ防壁に囲まれた内部はまさに異世界のように見えた。
 悪魔を信仰する集団どころか、悪魔そのものが暮らしているとしても、なんの違和感もない異様な光景だった。
 まして、こんな巨大な防壁や門が、噂ではほんの一週間ほどで出来上がったというのだから、まさに神か悪魔の所業としか思えない。
 大体、もっと環境のいいミッドタウンでもどこでも棲家を作ることはできたのに、彼らはなぜハーレムに集まってきたのだろう。
 マンハッタンが完全に封鎖されるまでは銀行や高級店を次々と襲撃してきた、こと金には抜け目のない連中だ。
 今となっては金よりも水や食糧のほうがずっと重要になってしまったが、それでも彼らを引きつけるものがそこにあったと考えるしかない。
(遺跡、か……)
 コスモスウエブは、マンハッタンの地中の遺跡から、およそ三千年前のものだろうという古い石版を掘り出したらしい。
 しかし、考古学者でもないならず者たちが、そんなものを欲しがるはずはないだろう。王が言った《永遠の力》とは、彼らを引き寄せるほど魅惑的なものなのか。
 悪魔を呼び出すことに執心していたというオズワルドが、遺跡を探していたわけも謎だった。
 遺跡から発見された石版には、《黒き門》や《命の鍵》のことが書かれていたと元信は言っていた。そして、《門》はどうやら貴臣のことらしい。
 コスモスウエブが操っているという忍者が貴臣に襲い掛かり、マンハッタンではハーピーや《地獄の諸侯》までが貴臣を狙って現れた。
 天如の話では、《gate》は異世界へと繋がるらしい。悪魔は、貴臣の体を通して仲間を呼び寄せるために連れ去ったのだろうか。
 貴臣の体が《gate》として開けば、この世界はいったいどうなるのか。
 ――人間には暮らしにくい世界になるかもしれない。
 ニューヨークにあるという力場のバランスが崩れた時、何が起こるのかと問いかけたユリに、矢吹は天如がそう言って笑っていたと答えた。
 あるいは世界中が、このマンハッタンと同じように夜空にハーピーが飛び交い、悪魔に怯える異界へと変貌するのか。
 考えれば考えるほど疑問は尽きない。四人の仲間を失い、ハーレムのはずれに立ち去ったという元信の行方も、矢吹が捜し歩いたが、まったく足取りがつかめないまま夕方近くには戻ってきた。
 夜はさすがにユリたちも出歩くことを避け、《gate》に近い空き家を勝手に宿に使わせてもらった。
 家と言っても、家具どころか窓枠や床材まで持ち去られてしまっていたが、雨露をしのげる屋根があるだけましだ。
 ハーレムとは目と鼻の先だと警戒していたけれど、新月までの二晩はハーピーに悩まされるわけでも、暴徒に襲われるわけでもなく、かえって不気味なほど静かに過ぎていった。
 いよいよ新月の日の朝、異変が起こった。眠っていたユリをそっと揺り起こしたのは、小龍だった。
「ユリ……」
「龍、か……」
 幾分寝ぼけた声音で寝袋の中から答えたユリに、恋人によく似た美貌が甘やかに微笑みかけてくる。
「お、い……? 小龍、なのか?」
 こんなところで入れ替わるなと龍に文句を言ってやりたかったけれど、本人もコントロールできないと言っていたのを承知で連れてきたユリのミスでもある。
「どうした? 腹でも空いたのか?」
 とはいえ、すでに新月の当日だ。今さらチャイナタウンに小龍を帰してやれる余裕もなかった。
 また何かの拍子に龍が現れることもあるかもしれないし、同行させるしかないだろうと覚悟を決め、朝食の催促かと訊いてみる。
 六つにしてもやけに口数の少ない少年は、わけも話さずにただユリのアーミージャケットの袖を引っ張り、どこかへ案内しようとするようだった。
 矢吹は大いびきで眠っていたが、ロイとスティーブの姿は家の中にはなかった。二人一組で不寝番をするようにしていたから、外にでもいるのだろうと、小龍に手を引かれながら一緒に出ていく。
 ドアのすぐ脇で、座り込んでいるスティーブとロイを見つけ、「おはよう」と人懐っこい声をかけた。
「おはよう、ユリ」
「おはよう」
 口々に挨拶を交わした二人も、ユリの袖を必死に引っ張っている小龍の様子に目を丸くする。
「どうしたんだ、龍は?」
「どうも、ゆうべ小龍と入れ替わっちまったらしい」
 様子が違うことにロイも気づいたらしい。訝しむように眉を顰めながら訊かれて、簡単に説明する。
 その間も、小龍はユリの腕を取ったまま先を急ごうとするから、苦笑して「ちょっと行ってくる」と二人に告げた。
 心配したのか、それとも好奇心を惹かれたのか、ロイを残して後ろからスティーブがついてくる。
 小龍が向かった先は《gate》だった。だが、昨日までとはまったく違う異様な光景に、ユリもスティーブも息を呑む。
「なんだ、あれは……?」
 そこに昨日は確かに見えていた、鋼鉄の頑丈そうな扉が消えていた。いや、消えたというのは正確ではない。扉のあった部分に黒っぽい灰色の煙が雲みたいなものがぐるぐると渦を巻いている。
 門よりもずっと異界の入り口にはふさわしい光景だったが、あの中へ入っていくのかと思うと少々ぞっとなった。
「通れるのか?」
「《gate》が開くのは夜だと聞いたが……」
 呻くみたいな声を上げるスティーブに、ユリも困惑を隠せずに呟く。けれど興味に駆られるまま、怖いもの知らずの二人は渦の近くまで歩み寄った。
「小龍、芙緋人に会いに行く時、おまえもこの中へ入っていったのか?」
 確認するように問いかけたユリに、袖をぎゅっとつかんだ小龍はこくりと首を縦に動かした。
 どうやら人間が通れるものらしいといくらかほっとして、いったいこれはなんなのかと渦の中へ手を伸ばしかける。その手首に、小龍が慌てたようにしがみついて邪魔をした。
「おい、触るなよ。そりゃ、まだ完全に開ききっていない。迂闊に触ると、どこかわからないところへ飛ばされるぞ」
 突然、背後から響いてきた声音に振り返ると、矢吹とロイがそこにいた。矢吹には、これが何かわかっているらしい。
「なんなんだ、これ?」
「見てのとおり、異界への入り口だよ。この壁も門も、この世のものじゃねー。これは、一種の結界だ」
「本当の壁じゃないってことか?」
 あの巨大な門が一晩で、まさに煙みたいに消えてしまったように、防壁も消えるのかと訊ねたユリに、矢吹は困った表情でまばらな髭の浮かぶ顎をぼりぼりと掻いた。
「本物は本物だが……あのハーピーたちみたいなもんだ。バランスが崩れるとここには存在できなくなって消えちまう」
「門が消えたのは、バランスが崩れたのか?」
「誰かがわざと崩したんだ。新月の闇の力を利用してな。……とんでもねー術者が、ハーレムの中にいやがるらしい」
「悪魔、か?」
「いやぁ……連中ならこんな面倒なことはしねーだろう。人間だよ」
 やけに自信を持った口調で矢吹は答える。つまり、異界の壁や門を自在に操れる人間がいるということか。
「人間に、こんな真似ができるのか?」
「力さえありゃ、不可能じゃねーだろう。俺も、こんなのを見るのは初めてだが……」
「天如なら、できるか?」
 矢吹を見ていると気になって、つい思ったことが口から出ていた。そんな能力を人が持つということが、そもそもユリには理解できない。
「さあなあ。あいつは、悪魔と同じで面倒くさいことは嫌いだからなあ」
 その言い方では、できるけれどしたくないというふうにしか聞こえない。それに天如は、貴臣をさらっていった《地獄の諸侯》と変わらないほどの力を持つと言われているようだ。
「ともかく、《gate》が完全に開ききるのは深夜だ。それまで待つしかねー。……腹が減ったな。朝飯にしようぜ」
 ここにいても仕方がないと、矢吹はあっさりユリたちを促した。《gate》の様子が気にはなったが、下手に近寄って不完全な門にどこかわからない場所へ飛ばされてもかなわないと、大人しくそれに従う。
 行方不明者、悪魔信仰、異界へ開く門、正体不明のハーレムの術者――事態はますます混沌としつつあった。
(貴臣……)
 ハーレムの上空を見上げるユリの目に、さらに黒々と不穏に垂れ込める暗雲が映った。
関連記事
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png 近況
もくじ  3kaku_s_L.png WORK
もくじ  3kaku_s_L.png イベント
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ENDRESS TALE
もくじ  3kaku_s_L.png ●恋
もくじ  3kaku_s_L.png 花と牙
もくじ  3kaku_s_L.png 恋闇
もくじ  3kaku_s_L.png NOVEL
もくじ  3kaku_s_L.png アニパロ
【闇へ開く宿命(さだめ)の扉 6】へ  【闇へ開く宿命(さだめ)の扉 8】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【闇へ開く宿命(さだめ)の扉 6】へ
  • 【闇へ開く宿命(さだめ)の扉 8】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。