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ENDRESS TALE

夜を宿す魔性の瞳 5

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           ◆

「貴臣――っ!」
 叫び声を上げて見開いた瞳に、自分を見下ろしているぼやけた影が映る。二、三度、瞬きすると、それはいくぶんはっきりと輪郭を結んだ。
「……ロイ?」
「ユリ、気がついたか?」
 ほっとしたように、端正なおもてが目に見えてゆるむ。
 アウトドアで使われるような電池式のランタンが、暗い周囲をほのかに照らし出していた。
 ロイの後ろに、凄まじい破壊の爪痕がくっきりと残る地下聖堂の岩壁と天井が見え、ユリは慌てて上体を起こした。
「っつ……っ!」
「無理をするな。落盤が起きたんだ。頭を打っているかもしれない」
「貴臣はっ!」
 強い頭痛を感じてこめかみを押さえたユリを支えようと、手を伸ばしてくるロイに、貴臣はどうなったのかと確かめた。
「無事だよ。二人とも傷ひとつない。奇跡的というより、これも《gate》の力なのかもしれないが……」
 ロイが軽く体をずらして示した先に、彼のアーミージャケットに包まれた純白の肢体が横たわっている。
 その言葉どおり、外傷は見当たらない。ジャケットの下の薄い胸がゆるやかに上下しているのを見て、強張っていた全身から力が抜けた。
 貴臣の向こうには、ちょうど魔方陣があった場所に突き刺さるように巨大な岩が折り重なっている。
 まさか、あの直撃を受けたのかと、ユリは蒼白になり、《gate》の力だろうというロイの意見に納得した。
 そうでもなければ、あの下敷きになって二人とも生きているはずはない。まして、怪我すら負っていないというのは、むしろ薄気味悪い。
 ずきずきと頭の奥が痛むものの、それも落盤のせいというより、何かに酔ったような感じだった。
「おい、ユリ……」
 ロイの制止も聞かず、ユリは無理やり起き上がって、貴臣の傍らへと膝をついた。
 お世辞にも血色がいいとは言えなかったけれど、すやすやと眠っている吐息は穏やかで安心する。
「スティーブは?」
「芙緋人と……オズワルドを捜している」
 ロイがわずかに言い澱んだのは、スティーブのM16で蜂の巣にされたはずのオズワルドが生きているとは考えたくないらしい。
 実際、ユリにもオズワルドが生きているとは思えなかった。だが、スティーブが捜しているなら、遺体はなかったのだろう。
「消えたのか?」
「ああ。ともかく、あの落盤だから、どこかで下敷きになっている可能性も残ってはいるが……」
 そうであってほしいけれど、悪魔に憑かれたまま彷徨うオズワルドの姿が、ロイの頭から離れないのだろう。
「芙緋人も?」
「上の地下道もかなりやられている。あっちこっち崩れて確認は難しい」
「あいつなら、生きているさ」
 悪魔に憑かれたオズワルドが逃げたのなら、悪魔そのものの芙緋人が逃げられないはずがないと、ユリは確信をもって答えた。
 ロイは、それに反論はしなかったが、よけいに暗鬱な表情を浮かべた。
「小龍は?」
「矢吹が外へ連れ出してくれた。ここは、いつ崩れ落ちるかわからない。我々もすぐ脱出したほうがいい」
「そうだな」
 オズワルドに取り憑いた悪魔も、そのオズワルドが《gate》を解放して呼び出した魔王とやらも、どこへ消えたかはわからない。しかし、少なくともこの聖堂の中には、すでにいないようだった。
 二度と貴臣に手出しをしないなら、連中がどこに行こうとユリは気にしなかったが、多分、そういうわけにはいかないだろうと、今は安らかに眠る青白いおもてを見つめた。
 不安そうに促すロイにうなずいて、いちだんと痩せた体を両腕に抱え上げる。
(《gate》か……)
 腕の中の貴臣には、なんの変わりもない。命を失ったわけでもないし、体を傷つけられたわけでもなかった。
 けれど、あの魔方陣の紅い光と、無残な虐殺を見てしまったあとでは、いくら豪胆なユリでも何もなかったことにして忘れられはしない。
 もちろん、貴臣が何も覚えていないなら、事実を教えるつもりはなかったけれど。
 ランタンに照らされる薄闇に、二度、三度とフラッシュが光り、振り返るとロイが魔方陣の残骸を写真に撮影していた。
「アーサーに送るのか?」
「ああ。上手く写っていれば、専門家が分析してくれるはずだ」
「米軍の専門家、ね」
 軍隊にオカルトの専門家などいるのかという不審そうなユリの口調に、ロイは小さく苦笑する。
 矢吹は、米軍がバチカン(法王庁)と協力していると言っていたから、おそらくその辺りのことなのだろう。
 地下道の出口には、矢吹と小龍、そしてスティーブが待っていた。
 さらに驚いたことに、地下道の上に建っていたあの教会はきれいに崩れ去って、大量の瓦礫だけがその名残をとどめているにすぎなかった。
「これは……」
「その辺でつかまえたヤツの話じゃ、真っ赤な火柱が教会を吹っ飛ばしたらしい……。まあ、俺たちも、危うく一緒に吹っ飛ばされるところだったが」
 ユリは意識を失っていたとはいえ、《gate》が解放された衝撃がどれほどのものだったかは、だんだん察しがついてきた。
 それでも、全員無事なのだから、ここにはよほど強運な面子が集まっているらしい。
「小龍、大丈夫か?」
 さぞかし怖がらせてしまっただろうとユリが気遣うように声をかけると、腕の中の恋人とも面差しの似た少年は、大人っぽく口元を綻ばせた。
「ええ。なんとか……」
「こいつ、土壇場で龍になりやがって……」
 苦手な相手を押しつけられたと、矢吹は不機嫌に抗議する。それでも、子供の体の龍を連れて逃げてくれたらしいから、根はいい男なのだろう。
「で、そっちは無事なのか?」
 矢吹が「そっち」と訊くのは、貴臣のことだ。外傷がないことはひと目でわかっても、やはり《gate》が開かれた影響が心配なようだ。
「とりあえず、な」
 貴臣が目を覚まして変わりないことを確かめるまでは、ユリも曖昧な返事をするしかなかった。
(だが……)
 地の底よりも深い闇の中で、確かに貴臣をつかまえたと思ったけれど、その気配は腕の中でいきなり消えた。それが、ユリの心に暗い不安を残していた。
「芙緋人は見つかったか?」
「いや……」
 スティーブは力なく首を横に振る。けれど、その顔つきでは、彼も芙緋人があそこで死んだとは思っていないようだ。
「次の新月まで、ねぐらが必要だな」
「それなら、わたしに心当たりがある」
 ハーレムから出るには、次の新月に結界の《gate》が開くまで待たなければならない。
 早く貴臣を落ち着かせてやりたいと案じるユリに、任せてくれと、龍が請合った。
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