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NOVEL

樹海の誘惑者 2

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           ◇

 最初の内こそ神経質になっていたものの、ある程度、様子もわかってきたのか、タフな八島が立ち直るのは、十火の想像以上に早かった。
 木々の間から木漏れ日が落ちてくる樹海の中は、季節がよければ恰好のハイキングコースだろう。
 GPSや方位磁石とも相性が悪いらしい八島は、一定の間隔を置いた木の幹に、帰り道の目印になるピンクの蛍光塗料を楽しそうに吹き付けている。
「昔を思い出すな」
 壁や路上に、ペンキで落書きでもしたクチなのだろう。いったいどんな悪ガキだったんだと、十火は呆れた。
「自然破壊だって苦情がくるぞ」
 もっとも、ここまで歩いてくる途中にも、おかしな立て看板やロープの張られた木々、不当に廃棄されたゴミもあった。モラルに欠けているのは、何もヤクザばかりではないらしい。
「非常事態だ」
 十火の抗議に、八島は真面目な声で答えるから、確かに非常事態だなといちおう納得した。
「なんで三日も迷ったんだ?」
 GPSが使えないことは、その時からわかっていただろう。実際、知らずに落ち葉の溜まった溶岩の穴に落ちたりして、怪我でもしない限り、一日歩きまわって、道路や遊歩道に出ないとは考えられなかった。
「あの時は、ロープを持って入っていったんだが、途中で消えちまってな」
「《切れ》たんじゃなくて、《消え》たのか?」
「ああ。……俺を帰したくなかったらしい」
 その頃、八島はまだ八州会の会長を継いではいなかったし、彼を殺したい者がいたかどうかも、十火は知らない。
 けれど、目印のロープを消し去った者は、おそらく生きた人間ではなかったのだろう。
「どこへ行っても、嫌われ者だな」
「もう慣れたよ」
 あっさりと応じる八島は、かつて《死に神》と周囲から忌み嫌われていた自分と、やはりどこか似ているのかもしれない。
 けばけばしいピンクの蛍光塗料のマークも、ひどく頼りないものに見えてきて、これも消えそうだなと、十火は肩を竦めた。
 いったいどんな体内GPSを持っているのか、それとも本当に錦織が案内しているのか、八島はまるで迷う様子もなく、どんどん原生林に踏み入っていく。
「おい。本当にこっちでいいのか?」
 遊歩道など横切りもしなかったし、まわりは同じように根っこのねじ曲がった木ばかりで、右も左もわからない。さすがに心細くなって、八島に確認した。
「本人が言ってるんだ。間違いないだろう」
「本人が……な」
 やっぱり聞こえているのかと、ひっそり呟いた。もちろん、十火には折り重なった木以外に何も見えないし、自分たちの足音以外の音も聞こえもしない。
 さっきまでは、木漏れ日が気持ちいい、空気が澄んでいると、森林浴気分だったのに、うっそうとした木々の下をどこか薄暗く感じ始めていた。まだ昼間のはずなのに。
「やけに冷えるな」
 これだけ歩いているのに、いっこうに体が温まらないことが、おかしいと気づく。
 いくら冬場だって、マラソンをしていれば汗もかくはずだ。足場の悪い樹海の中を早足で歩けば、それぐらいの運動量はあるだろう。
「まわりにいるからな」
「もしかして、霊障ってヤツなのか?」
 自分が殺した男の幻を見たことはあったが、それ以外にはおかしなこととはまったく縁のない十火だ。前を歩いていく、おかしなことが当たり前の男に、恐る恐る訊いた。
「ああ……」
「くそっ……」
 きっぱりと肯定されて、誰にともなく罵った。祟るなら八島に祟れと言ってやりたいところだが、「組長の側にいらっしゃれば、同じ現象が起こる」と言った村田の言葉が真実なのだろう。
 この男と一蓮托生というのは、あまりうれしくもなかったけれど。
「ぼやくな。そろそろ近いぞ」
「ありがたいな」
 十火には何もわからないのが口惜しくて、皮肉に言い返した。自分だって霊障を受けるというのなら、せめて八島と同じ条件にしてほしい。
 かといって、見たくもない存在に常に煩わされるのも、並みの人間なら耐え難い状況だろう。
「なあ、埋めてあるなら、スコップとか持ってきたほうがよくなかったか?」
 目印用の蛍光塗料のスプレー缶がひとつという八島は、あまりにも軽装備で、十火はいまさらのように質問した。
「必要ねーよ。多分……」
「どういう意味だ?」
「この辺りは、富士山の噴火でできた溶岩台地だ。地面といったって、土なんかほとんどねー。死体を埋めたとしても、せいぜい溶岩の穴に放り込んで落ち葉でも被せたぐらいだろう。……それに、頭のこの辺に、落ち葉の中から突き出してる骨のイメージが映るんだ」
 自分の後頭部を指差して、八島はあまりうれしくもなさそうに眉を顰めた。誰だって、そんなイメージを見ても気分はよくないだろうが。
「なんでそんなもんが、おまえに見えるんだよ?」
 今まで八島が十火にまでひた隠しにしてきたのも、無理はないかもしれない。
 見えもしない十火には、何を聞いても簡単に受け入れられることではなかったし、きっと八島の心境など一生理解できないのだろう。
「知るか。好きこのんでやってるわけじゃねーよ。俺だってこんな寒空の下で樹海なんか歩きまわるより、あったかいベッドの中であんたとイチャついてるほうがいい」
「大声で怒鳴るなよ」
 おかしなものが見えたり聞こえたりするわりには、八島は根っからの俗物だった。もっとも、どんな能力があろうと、人間の本質なんてそもそも俗っぽいものなのかもしれない。
 そういうところは、自分と同じレベルで安心できるものの、多少の羞恥心ぐらいは持ってくれと、赤くなりながら抗議する。
「生きてる人間は聞いてねーよ」
 死人ならいいのかという反論を、あまり考えたくなくて、十火は胸に呑み込んだ。
「あった……」
 声を上げた八島の視線を追った先には、ひときわ大きなもみの木がそびえていた。
 太い蛇のようにうねった根本へと、八島はどんどん歩み寄っていく。ある場所でしゃがみ込むと、近くに落ちていた小枝を使って地面を覆っている堆積した落ち葉を掻き分けた。
「見つけたのか?」
「ああ……」
 緑色に苔むした、一見、枯れ枝とも木の根ともつかないものが、落ち葉の間にあった。言われてみなければ、人骨だとは気づかないだろう。
「けっこう簡単に見つかるもんだな……」
 もちろん、八島がいなければ、この広い樹海の中で錦織の骨を見つけることなんて、とうてい不可能だっただろう。
 しかし、ついてきただけの十火には、あまりにも呆気ないような気がして、それが口を衝いて出た。
「いいかげんに埋めてたんだろう。この辺は、野犬が多いからな」
 世話のできなくなった犬を飼い主が捨てていくのが、野生化するらしい。群れをなしているから、犬といっても馬鹿にはできない。
「犬のえさか……」
 ヤクザの末路なんて、結局、そんなものかもしれないと、十火はちっぽけな骨を見下ろした。
 落ち葉を払った骨を拾い上げて、八島はコートのポケットから取り出した小さな桐箱に収める。
「それっぽっちでいいのか?」
「サツじゃねーんだ。全部、拾い集めたりするか。面倒くせー」
 言われてみれば、十火だって、見ず知らずのヤクザのために、そんな手間暇をかけるのはごめんだった。
「なら、誰の骨でもいいじゃないか」
 いっそ樹海まで来なくても、その辺の骨を拾っていけばよかったじゃないかと、拍子抜けした声音で男を責めた。
「そんなことしてみろ。また、先代の夢枕で姐さんが文句を言うぞ」
「なるほど……」
 生きている人間はごまかせても、死んだ人間をあざむくのは難しいものらしいと、十火も納得する。
 先代がうなされようとかまいはしないが、二度と、自分たちのセックスの最中に邪魔をされたくはなかった。
「帰ろう。長居は無用だ。雲行きが妖しくなってきた……」
「そうか……?」
 木漏れ日が射している空は、雨など降りそうな様子はないがと見上げると、木々の枝がざわざわと揺れている。
「風か……?」
「十火……」
 ふいに緊張した声で呼んだ八島に、乱暴に手首をつかまれた。そのまま十火を引っ張るように駆けだす八島に、呆気に取られる。
「おい。どうした……?」
 わけがわからずに問いかけたせつな、ざわっと背筋が凍りついた。さっきまでとは、明らかに周囲の空気が違うと、十火でも感じ取れる。
「なんだよ、これ……?」
「奴ら、俺を、ここから帰したくねーんだよ。そう言っただろう」
 ひょっとしたら、ここにいるものたちに嫌われているのではなく、逆に八島を欲しがって、闇に引き込もうとしているのだろうか。
 ホモでろくでもない男だけれど、十火はこの男が気に入っている。いや、気に入っているのは八島がくれるセックスの快楽だけかもしれなかったが。
 どちらにしろ、生きてもいない連中に渡すことはできなかった。まして、村田やカズたちは、この男の帰りを待ちわびている。
 八島とともに、隆起や穴ぼこだらけの原生林の中を、来た時とは桁違いのスピードで走った。
 ふいに、八島の足が何かにつまずいたように止まる。木の根にでも足を取られたのかと、十火は焦りながら振り返った。
「どうした?」
「足をつかまれてる」
 強張った八島のおもては、怯えているようには見えなくても、苦痛でも感じるのか異様に青ざめている。
「動けないのか?」
「ああ……」
 十火には、相手の姿は見えなかった。かといって、このままじっとしているわけにもいかないと、ジーンズの後ろに挟んだ愛用の銃、ワルサーP99を抜く。
「おい。銃なんかで……」
「一応、村田からもらった御神酒で、銃も弾も磨いてある。ちゃんと神社に奉納したヤツだ。効き目があるかどうかはわからないが……。あとは気合いだそうだ」
 過去の樹海で遭遇した経験の賜物か、村田なりに八島のための対抗策を検討していたのだろう。
 それを馬鹿にしないで、忠告を受け入れてよかったかどうか、効果のほどは実際に試してみるしかない。
「村田の言いそうなことだな……。いつの間にそんな用意をしてたんだ?」
「用意だけは、かなり前からな」
 樹海に限らず、八島の護衛には対人仕様以外の装備も必要らしいと、十火もようやくわかり始めてきた。
 狙いの定めようもないから、八島の足元すれすれに引き金を引いた。
「俺を撃つなよ」
「俺が、そんなヘマするか……。動けるか?」
 幽霊など見ることはできないし、村田のように仕事のサポートができるわけでもない。十火にできるのは、ただ銃を撃つことだけだ。しかも、人を殺すことさえできなくなったヒットマンだけれど。
「驚いた。気合いというより、俺への《愛》だな」
 どうやら、御神酒の効果はあったらしく、八島は自由になった足首を確かめるようにぐるぐるまわしながら、感心する。
「気色の悪いこと言ってないで、早く来い」
 鉛玉に愛なんかあるかと、照れ隠しみたいに乱暴に反論して、焦れたように八島の腕を取って走った。
「ったく、とんだ黄泉平坂(よもつひらさか)だ」
「学があるな」
 あの世の化け物たちに追いかけられたイザナギになぞらえて皮肉を言うと、隣を走っている八島に意外そうに見つめられる。
「バカにするな。俺だって、古事記ぐらいは読んだ」
 非常識なホモの八島に、よほどの常識知らずのバカだと思われていたのかと、無性に腹が立った。
「来るぞ……」
「どこだ?」
 警告されたところで、十火には何も見えないと、自棄になって怒鳴り返す。
「前! 左から伸びている木の枝……」
 八島の声と同時に銃を撃った。ヒットマンの勘とでもいうのだろうか。相手は見えないのに、薄い膜でも掠めたみたいな妙な手応えを感じた。
「何がいた?」
「女だったよ。赤いドレスの……」
「くそっ……」
 幽霊が撃たれるとどうなるのかなんて、十火には想像もつかない。八島には見えているのかもしれないけれど、わざわざ確かめたくもなかった。
「もうこの世の者じゃない」
 慰めるような声は、十火の胸を塞いだ鋭利な痛みを感じ取ってくれたのだろう。八島の前だと、自分は強くなり、そして限りなく弱くもなる。
「それでも、女を撃つのは気分が悪い」
「おまえ、いい男だな」
「今頃、気づくな」
 ほろ苦い愚痴をこぼすと、やさしい目つきで笑われた。だから惚れたんじゃないのかと、こんな時なのに悠長に言い返した。
「正面っ! 右の木の陰……」
 うじゃうじゃいると言っていた八島の言葉は、誇張でもなんでもなかったらしい。指示されるとおりに、十火は息つく間もなく引き金を引き続けた。
 闇雲に走ってきたから、ただでさえあやふやだった方向感覚を完全に失っていた。車を停めた位置など、見当もつかない。
「道は確かだろうな。目印は?」
「確かめてる暇はない」
「おい……」
 どうやら、八島のほうも十火とあまり状況は変わらないらしい。本当に迷うぞと、不安になってきた。
「心配するな。道案内がいる……」
「錦織か?」
 いまだにヤクザ者の幽霊なんかが信用できるとは思えなくて、あからさまに疑う口調で訊き返す。
「いや……さっきから俺の頭に……。十火っ!」
 突然、叫んだ八島が、十火を庇うみたいに背中から覆い被さってくる。いっしょになって、木の根が張りだした地面にどっと倒れ込んだ。
「正宗っ!」
 かろうじて、やわらかな落ち葉の上で受け身を取ると、鼻腔に血の匂いを感じて、驚いて傍らの八島を覗き込んだ。
 男の首筋がすっぱり切れたように薄い傷口を広げ、そこから血が流れ出している。派手な出血のわりには浅傷のようで、ほっとした。
「バカ野郎っ! 俺なんか庇いやがって……」
 ボディーガードの自分が庇われては面子が立たなくて、八州会を束ねる立場を考えろと八島を怒鳴りつけた。
「あんたに死なれたら、引退したあとの楽しみがなくなる。来るぞ、でかいのが……」
「なんなんだよっ……?!」
 十火には見ることはできないのに、凄まじい速さで近づいてくるものの気配だけは強烈に感じてわめく。
「後ろだっ! 真後ろの木を狙え……」
 八島に言われたとおりに、背後の巨木へと立て続けに銃弾を撃ち込んだ。
 しかし、何ものかの勢いは衰えなかった。ぶわっと、風のような唸りのようなものが押し寄せてくる。
「ちくしょうっ……」
 無我夢中で引き金を引き続けた。ヤバい。殺られるぞと思った瞬間、上から別の何かが降ってくる。
 反射的に自分の胸元へと、ずっと大柄な八島の体を引き寄せた。
(稲妻……?)
 眩しい閃光が見えたと思ったせつな、十火の意識が遠ざかった。

           ◇

「怒るなよ。二人とも無事だったんだ」
 特別仕様のベンツの車内で、懲りもせずに背中を向けて拗ね続ける十火を、八島が楽しそうになだめていた。
 男の前でわざと怒ったり拗ねたりするのは、八島に言わせると《ツンデレ》という《萌え》の一種らしい。
 絵に描いたような美少女ならともかく、三十男のツンデレのいったいどこに萌えがあるのか、十火には理解できない。
「あの光はなんだったんだよ? 一瞬で、おかしな気配が霧散したぞ」
 十火が気に入らないのは、自分の一番の見せ場を、得体の知れないものにあっさりと奪われてしまったことだ。
 それをいうなら、自分たちに襲いかかってきた相手だって、十分に得体は知れなかったけれど。
 ヒーローになるつもりが、怪獣大戦争に巻き込まれて逃げ惑うエキストラに格下げされた気分で、どうにも納得がいかない。
「だから、それは……」
「俺への《愛》だとか、ふざけたことを言うなよ。……女がいた」
 真っ白な光の中に、一瞬、輝く女が見えた。失神して夢の中で見た幻覚だなんて、それが一番理にかなっているとしても、十火は信じたくない。
 確かに、女はいた。十火や八島がここに存在するように、彼女があの場にいたのかどうかはともかく。
「霊峰、富士には、女神がいるんだよ」
 まるで親しい知り合いか、深い仲の女みたいな八島の口調が、ホモのくせにといっそう不愉快で、十火は不審をあらわにしたおもてを、男へと近づけた。
「なんで神様が、ヤクザのおまえを助けるんだ?」
「さあな。……昔の男にでも似てたんじゃねーか?」
「いいかげんなことぬかすなっ!」
 やっぱりバカにされているのか、からかわれているのか。肝心なところで、八島は自分をはぐらかす。
 おまえはいったい何者なんだと、陽気な男の笑顔を、樹海から遠ざかり緊張が解けた車内で、十火はじっと見つめ続けた。
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