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花と牙

花闇 ~退魔師・能勢頼人の誘惑~ 3

 ←更新しました →花闇 ~退魔師・能勢頼人の誘惑~ 4

        墨染

 悪魔に憑かれた教祖が隠れ蓑にしていた『上光教会』の本部に近づくにつれ、三浦から聞いていたとおり、雑多な霊気まで消えていくのを感じた。
 代わりに強まってくるのは、乾ききった冷たいまでの虚無だ。
 それが生きている者にとっていいことであれ、悪いことであれ、世界のバランスとはこういうものなのだろうと、今はわかっている。
 魔を斬るほどに、周囲の闇は深まっていく。それを自分の力だと勘違いして、刀を振るっていた頃もあったけれど……。
 幽霊を怖がる大介は、きっと本能的にこの世界がどうあるべきかを理解していたのだろう。
「《闇》……だな」
 助手席で眠っているように目を閉じていた頼人が、ポツリと呟くと、大介が驚いて振り返る。
「ボス……?」
「能勢家を継いだ八つの時から、俺はずっとこの闇の中を歩いてきた……」
 退魔師の家に、最強と言われる力を持って生まれてきた頼人の役目は、ただひたすら魔を斬り続けることだった。
 けれど、どれだけ斬ったところで、魔物が尽きることはなく、目の前の闇は広がるばかりだった。
 そうして、漆黒の中で足掻き、死ぬまで戦い続けるのが退魔師の宿命だと悟り、すべてを諦めていた頼人の前に、眩しいばかりの白銀の閃光をまとって舞い降りてきた最大の魔物が、隣で不安そうなまなざしを向けている青年だ。
 頼人に大介の心が理解できないように、彼が頼人の気持ちを知ることもないのだろう。大介と出会えて、頼人がどれほど幸せを感じているかも。
 頼人の言葉の意味を計りかね、困ったような顔つき窺っている大介を、ようやくシートから上体を起こして促した。
「行こう。鍵は預かってる」
 かつて『上光教会』の施設だった高い塀に沿った路上に停まっている覆面パトカーから、頼人は身軽に外へ出た。
 三浦の報告どおり、教会の敷地は事件以来閉鎖されていて、人っ子一人いない。
 正面から少し離れた通用門の鍵を開け、さっさと中に入っていく頼人を、大介がいくぶん遅れて追いかけてくる。
 まっすぐに聖堂へ向かった。
 悪魔に憑かれた教祖の罠から、大介に助け出され、その腕に抱かれて上った地下室の階段を、あの時とは逆にたどる。
「ボス……」
「うん?」
 後ろを歩いてくる大介に、緊張したみたいな掠れ声で呼ばれ、振り返りもしないでなんだと訊く。
「この先には、もう何もありません。魔道の気配も完全に消えています」
「そのようだな……。どうした? ここに幽霊なんか出ないことは、もうわかっているだろう?」
 大介が地下へ下りるのを嫌がり、頼人を引き留めようとしていることに気づいて、何を怖がっているのかと笑った。
「……そうじゃ、ありません」
「大介……? おかしなヤツだな」
 本当は、大介が言いたいことくらい容易に察しがつく。嫌ならはっきり口に出せと、胸の中でなじって、頼人はわざととぼけてみせた。
 石が崩れ、切り裂かれたように亀裂の走った階段は、足下も危なっかしい。階上の光が届かず、だんだん暗くなってくる。
 たとえ暗闇でも、困るような頼人でも大介でもない。かまわず、闇の中を歩き続けた。
 強大な魔物同士の戦いの衝撃に、頑丈な鉄の扉が飴のようにぐにゃりと曲がった地下室の入り口の前で、大介は、思いあまったみたいに乱暴に頼人の腕をつかんで止めた。
「なんだ?」
 目も合わせずに問いかけた。大介が理由さえ打ち明けたくない気持ちだって、わかってはいたけれど……。
「行かないでください」
「なぜだ?」
「……だって、ボスは……ここで……」
 この地下室で、悪魔の本性を現した教祖に囚われ、嬲られていた頼人の姿を、大介も見ている。
 思い出すことさえつらいのは、きっと大介のほうだろう。命令に背いても、頼人といっしょにここへ来なかったことを、いまだに後悔しているのかもしれない。
「悪魔にとらわれ、犯されたからか?」
「ボスッ……」
 悪びれもせず、ありのままを告げる頼人に、大介は、静かな口調を掻き消すような険しい声を上げた。
「怒るなよ。瓦礫といっしょに地下に落ちた時に失神して、そのあとは力を封じられていたから、不可抗力だったんだ」
 迂闊だった。本来の力を発揮できていれば、やすやすと魔物の手に堕ちるような頼人ではなかった。
 三浦を救うためだったとはいえ、どこかで大介との些細ないさかいを気にしていて、油断を生んだのかもしれない。
 それで、よけいに大介を傷つけているんだから、バカな話だと、頼人は自嘲気味に口元を綻ばせた。
「怒っているわけじゃありませんっ……」
「嘘つけ……」
 大介だって、頼人が教祖の目を自分に引きつけておくために、わざと囮になったのだと、薄々、気づいているのだろう。
 魔物の欲望を惹きつけてやまない自分の体を、頼人は利用している。それが、頼人を一途に慕う大介には許せないはずだ。
 でも、大介自身も、頼人に魅せられた魔物なのだという想いが、彼の口を重くしている。
(バカなヤツだ……)
 恋人なら、相手の不実に怒り、嫉妬するのは当然だった。ただ、大介の場合、その嫉妬は十キロ四方の霊体のすべてを吹っ飛ばすという壮絶なものだったけれど……。
「……俺は、ボスにあんなことを思い出させたくないだけです」
「わたしは、あのぐらいで傷ついたりしない……。それに、今はおまえがいるだろ?」
 あの夜、大介は頼人の体を抱きしめて、二度と何ものにも触れさせない、自分が守ると誓ってくれた。
 頼人自身もそう望んでいるから、大介の求めに応じたのだと、いいかげんにわかってほしい。
 欲しいのはたった一人、富士の風穴へ白銀の光とともに現れ、頼人の視線と心を一瞬で奪った、この男だ。
 頼人の胸にある深い闇を満たしてくれるものなど、ほかにどこにもいなかった。
「え、俺……?」
「おまえといっしょじゃなきゃ、来ないさ。こんなところ……」
 魔物に犯されようと、人間の男にいくら抱かれようと、虚無の闇に閉ざされた頼人の心にまで届くことはない。
 事件の終わったこんな廃墟にわざわざ来る必要も、頼人にはなかった。そう呟いて、大介の腕をすり抜け、地下室に入っていく。
 この世ならぬ戦いの痕を示すように、天井の一部が壊れ、外の日の光が射し込んでいた。
 それが、ちょうど地下室の中央に作られた石の祭壇を、黄昏に染まり始めた金色の光で薄闇の中に浮かび上がらせる。
 頼人は、鋭い亀裂が入った石畳に足音を響かせ、祭壇へ歩み寄った。
 数ヶ月前、罠に落ちて教祖にとらえられ、レイプされたその場所に、平然と腰掛けて大介を見つめる。
「何も感じないな。見事なくらいに……」
 頼人がそう言ったのは、もちろん感傷などではなく、そこにあったはずの霊体たちのことだ。
 それらを消し飛ばしたのが、頼人の痴態を目にして我を失って解放された自分の力だと思い知らされた大介は、血の気のない唇を噛む。
「あの時のおまえには、忌々しい悪魔憑き教祖とわたしぐらいしか見えていなかったかもしれないが……。この祭壇には、生々しい血の匂いといっしょに、あの悪魔に殺された青年たちの恐怖と苦痛が染みついていた。意識を遮断していても、何度も彼らの泣き叫ぶ声が聞こえたよ。今は……こうして触れていてさえ、何も聞こえない」
「俺の……せいです。俺が、考えなしにあんな力を解放したから……」
「残っていたのは、人の未練や怨念だ。消えてしまったところで、誰にも不都合はない……」
「でもっ……」
 想いを残すことそのものにさえ何かの意味があると、大介は言いたいのだろうか。
 彼自身も、半分は強烈な思念の塊のような存在なのかもしれない。消えてしまったものたちと彼とに、どんな違いがあるのかさえ、頼人にはわからない。けれど……。
「そんなことで、いちいち傷つくな。心を揺らすな。おまえはやるべきことをやったんだ……」
「俺はっ……」
「おまえが来なければ、わたしは悪魔に取り込まれていた。ヤツがわたしの力を手に入れればどうなるか、今のおまえになら少しはわかるだろう?」
「……あ」
 力を重ねて増幅させる。人の体は、一種の触媒だ。頼人に流れている能勢家の血は、どれほど莫大な力でも受け入れられる無限の器のようなものらしい。
 三浦は呆れていたけれど、大介の霊気を間近に受けて平気でいられるのも、その血のおかげだろう。
 大介を産んだ母親も、あるいはそうした血を受け継ぐ者だったのかもしれない。
 頼人を守ると誓った以上、大介はその役目を果たせばいいのだと、迷う男に言い聞かせた。
 人だろうと神だろうと、すべてを救えるものなどいない。そんなことを望むのは、思い上がりか、ただの誇大妄想だ。
「おまえの力は、わたしと、生きている人々を守ったんだ」
「……俺の力、が、守った?」
「そうだ……」
 大介が教祖に憑依していた悪魔を滅ぼしたおかげで、目の前の人々が救われたのだとうなずくと、まだいくらか不安そうな顔で、足下に視線を落とす。
「……俺は、ここにいてもいいんですか?」
「わたしの側が嫌なのか?」
「いいえっ! ……いいえ、俺はっ……」
 自分の側にいることに不満があるのかと逆に咎めると、大介は慌てて、大きく首を振って否定した。その正直すぎる返事に、ひっそりと笑みをこぼす。
「来いよ」
 おまえが本当に守りたかったものを教えてやると、手を差し伸べた頼人に、フラフラと歩み寄った大介が、痛いくらいの力で抱きしめてくる。
 熱い吐息が頬にかかり、薄く唇を開くと、らしくないほど強引な舌がすべり込み、口腔をまさぐった。
「大介……」
 腰を抱いている大介の手を、スラックスの上から内腿の奥へと導く。
「ん……っ、はっ……」
 触れてほしいとせがむように下肢を浮かせると、ふいに正気に戻った目が、上気した頼人のおもてを見下ろして、戸惑う。
「ダメ……ですっ。こんなところで……」
「誰も来ない……」
「車を外に停めたままです。それに……」
 不謹慎だと言いたそうに無言で責める真面目な大介の目つきに、頼人はうっすらと微笑んだ。
「殺人現場だからか? 被害者なら、もう……」
「だからって……」
 残留思念までおまえが消し飛ばしたじゃないかと言い訳する頼人に、責任を感じている大介は、かえって後ろめたそうに尻込みした。
「おまえが悪いんだぞ。いくら誘っても、滅多に部屋に来てくれないから……」
「ボス……」
「頼人だ……」
 キスしながら役職で呼ぶなと、いつまでたっても無粋な男に抗議する。
 とっくに我慢の利かなくなっている体を、その分厚い胸に押しつけてやると、大介は苦しげに眉を顰めた。
「頼人、さん……。でも、三浦さんたちの誘いも、断れなくて……。俺はまだまだ刑事としては未熟だし。すみません」
「あれは、三浦の嫌がらせだ」
 職場の親睦だという三浦たちを信じ込んでいるらしい大介に、自分と大介の邪魔をするために、毎晩飲みに誘っているのだと、ネタを明かしてやった。
「え……?」
「わたしが、よその男ならともかく、4課の部下とセックスしているのが心配らしい……」
「なんで……?」
 三浦に邪魔をされたこと以前に、どうして彼らが頼人と大介の関係を知っているのかと、一瞬、赤くなった顔は、すぐに青ざめていく。
「おまえの態度を見てれば、あからさまだろう。あいつら、まがりなりにも刑事なんだぞ」
 まだバレていない気でいたのかと呆れながら、鈍すぎる部下を睨んでやる。いくら初心な男でも、ここまで鈍感だと刑事としての資質まで疑いたくなった。
「じゃあ……俺のマンションを二人が見張ってたのって?」
「力のせいだと思ってたのか? 同僚にまで警戒されているんじゃないかと、不安だったか? それとも、わたしの命令だと?」
「それも、考えました……」
 頼人まで疑っていたことを、大介は隠さずに打ち明けた。
 霊気に敏感な大介が、マンションを見張っている三浦たちの気配に気づかないはずはない。同僚に監視されても不満ひとつ訴えなかったのは、大介にも自分が半妖だという負い目があったせいだろう。
 教会の地下で解放した大介の霊気と、そのとんでもない破壊力を、三浦も渡もその場で実際に見ている。
「まあ、それとなく様子を見てくれとは頼んでいたんだが……。三浦にとっては、おまえをわたしに近づけさせないためにも、一石二鳥だったんだろう」
「俺は……」
「誰にも祝福されないことぐらい、最初からわかっていただろう? それでも、おまえはわたしを守りたいと言った……」
 人間同士だって、同性で、しかも上司と部下の恋愛など上手くいくものじゃない。まして、ずば抜けた退魔師の頼人と、本来監視されている立場の半妖の大介とでは、なおさら茨の道だということぐらいは、いくら世間知らずの大介にもわかっているはずだ。
「今でも、気持ちは変わっていません。俺は……あなたを、もう二度とあんなふうには……。俺だって、あいつらと何も変わらない化け物だけど、もしボスが……」
 それでも、頼人を誰にも渡したくないと、大介は真摯に訴える。気弱に揺れそうになるまなざしを、頼人はその襟元をつかんで、無理やり引き戻した。
「バカ。答えなら、とっくに出てるだろう? それとも、わたしを抱いているだけじゃ不足か?」
 自分から求めて抱かれたのは、大介だけだ。こんなに欲しがっている気持ちが、たった一人の男にストレートに伝わらないことが、ひどくもどかしい。焦燥やもどかしさは、頼人が初めて知る感情だった。
「頼人……」
「来てくれるか? わたしの部屋に……」
「はい……」
 どこか懇願するように問いかけた言葉に、大介はようやくはっきりとうなずいた。
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