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●恋

砂上の仁義 4

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     4.

「客ぅ……?」
 濃密な一夜を明かしたその部屋で、いっしょに着替えながら、派手な柄のネクタイを手にして振り返った大吾が怪訝そうな声を上げる。
「先週、話しておいただろう」
 どうせ、話半分しか聞いていないことくらいわかっていたけれどと、蒼一郎は上質な藍大島の着物に袖を通し、少し呆れながら答えた。
「そういや、そんなことを言ってたっけ? その、なんとかって国は、どこにあるんだ?」
「アラビア半島の端っこにある小国だそうだ。だが、石油と天然ガスが豊富に産出されるおかげで、国民の生活水準は高いらしい」
 下町の極道一家で慎ましく育った上に、昔は台湾マフィアの黒龍会との抗争で、莫大な借金まで抱えていた。
 海外旅行だって滅多にしたことのない蒼一郎にとって、アラブの裕福な産油国の王子の存在など、まさに夢のような話だった。
「オイルダラーってやつか。そんなのがなんでうちに……?」
 大吾ばかりか、蒼一郎にとっても縁もゆかりもない相手だったけれど、若宮組の先代組長だった祖父に頼まれたことだから、嫌とは言えない。
「水上総帥から、お世話を頼まれた」
「あの妖怪ジジイ、まだ生きてやがったのか」
 若宮組の上部組織である水上組と、中東から欧米へと事業を展開する水上グループは、浅からぬ関係にある。
 蒼一郎も、まだ元気だった頃の祖父に、水上秀一翁の屋敷へは何度か連れていってもらったことがある。
 もっとも、年中多忙な当主とは、二言三言挨拶を交わして、頭を撫でてもらったことを覚えているぐらいだ。
 祖父のほうは、水上翁とは腹心の親友同士だったと聞かされている。
 しかし、大吾まで妖怪呼ばわりするほど水上翁をよく知っているということは、少し意外だった。第一、水上組の会長さえ頭が上がらない相手に、そこまで暴言を吐ける男も滅多にいないだろう。
「大吾、口を慎め……」
「妖怪は妖怪だろうが……。権藤の狸よりも腹の中が読めねー、食えねージジイだぜ。その王子様ってのは、ジジイの商売相手か何かか?」
「孫だよ」
「へっ?」
 王子と水上翁との関係を短く説明すると、大吾はきょとんと目を瞠る。どうやら、水上家とアラブの王家の縁については、まったく知らなかったらしい。
「総帥に、孫ほど歳の離れたご令嬢がいたことは知っているだろう?」
「ああ。あのとんでもねーじゃじゃ馬娘か。相手が極道だろうが、大企業のお偉いさんだろうが、気に入らなきゃ平気でツラを張りやがる。俺もガキの頃、口の利き方が悪いって、何回かはたかれたっけ……」
 その口ぶりでは、大吾が水上翁と会っていたのは、蒼一郎が生まれる以前のことらしい。とはいえ、子供の頃と今と、大吾の性格がそう変わっているとも思わなかった。
「だから、自業自得だ」
「そういや、けっこう前に外国人と結婚したとか聞いたが、じゃあその……」
「ご子息だ……」
 半分は日本人の、しかもヤクザの血を引いているとなれば、王族という高い身分にあるほど、苦労も多いだろう。
 水上翁が、たった一人の身内を可愛がる気持ちは、祖父に溺愛されて育った蒼一郎にもなんとなく理解できた。
「あの母親に似てたら、とんでもねえークソガキだぞ」
 大吾の口調からは、水上家の令嬢に何か特別な想いを抱いていたとは考えにくいが、根っからのセックスと女好きの上に、男女の性別にかかわらず気の強い相手が特に好みなのもわかりきっている。
「王子が、おまえのその分厚いツラを張れるぐらいの猛者なら、僕も安心だ」
「どういう意味だよ?」
「非公式なご訪問とはいえ、相手はれっきとした王族だ。くれぐれも、おかしな真似はするなよ」
 日本に滞在する間、若宮家で王子の世話をしてほしいというのが、水上翁の要望だった。ホテルなどに宿泊するより、一般的な日本家屋での生活をさせてやりたいのだと言われたけれど、ヤクザの家が一般的かどうか、蒼一郎にははなはだ疑問だった。
 それに、この話はどうも怪しいところが多すぎる。いくら蒼一郎の祖父と水上翁が親友同士だったとはいえ、一国の王子でしかも目の中に入れても痛くないほど可愛い孫を、幼児の頃に会ったきりの蒼一郎に預けたいというのは、どう考えても無理がある。
 水上翁の腹の内が読めない上に、この屋敷には大吾という厄介な狂犬が同居している。それも、蒼一郎をためらわせる大きな理由だった。
「俺が、そのクソガキ相手に、何をするってんだよっ?」
「サイ王子は……お母上の沙也さんに瓜二つだそうだ」
 蒼一郎の返事を聞くと、案の定、大吾は目を丸くして、ゴクリと唾を飲み込んだ。何を想像しているか、容易に想像がつくにやけた顔だ。
「そりゃ、確かに……」
「わかっているだろうが……」
「わかってるよ。浮気したら殺す、だろ?」
 初めて大吾に抱かれた時、この下半身のトラブルが絶えない男に、蒼一郎は厳しい条件を突きつけた。
 それが、「浮気したら殺す」だ。
 とはいえ、当人たち以外、誰も守れるとは思いもしなかったこの条件を、大吾は現在まで違えたことはない。
 昨夜の「……ほかの誰とヤっても、これほどの快感は得られねー」という言葉は、案外、大吾の本音なのかもしれなかった。
「おまえのそのささやかな脳みそに、きちんと刻み込んでおけよ」
 しかし、相手は常識の通用しないケダモノだ。用心に越したことはないと、蒼一郎は念を押して、端正な着物姿で身を翻した。
 障子戸を開けて、廊下に出ていく後ろ姿を、ドタバタと足音も荒く大吾が追いかけてくる。
「おいっ、あんまり生意気言ってると、ケツの孔にバイブといっしょに俺のモンぶち込むぞっ!」
 いくら組員たちも承知の関係とはいえ、そういうことを大声で怒鳴るなと、蒼一郎はピクピクするこめかみを押さえた。
「その下品な言葉も、王子がうちにいらっしゃる間は慎めよ」
「……日本語、わかるのかよ」
 どうせ大吾の頭では、卑猥なスラングなら山ほど知っていても、バイリンガルもろくに想像がつかないのだろう。
「母国語に、日本語、英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、そのほか……七カ国語程度は不自由なく話せるそうだ」
「天才かぁ? いくつなんだ、そのガキ?」
 今は興味なさそうな態度で訊いていても、王子本人を目の前にすれば、どんな狼に変貌するかわかったものじゃない。
「十八歳。僕と同い年だ」
 嫌な予感とともに答えた蒼一郎に、大吾は短く口笛を鳴らした。
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