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イベント

J.GARDEN 10/2 に参加します(新刊あり・多分;)

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J.GARDEN 10/2 (日)

場所:池袋サンシャイン Bホール

スペース:月代探偵社 し07ーa

新刊:『新・新妻刑事1』

アズノベルズ『新妻刑事』の続編です。

表紙フルカラー/ノベルズ版/64p/500円




        1.

「ん……何時、だ?」
 やわらかな吐息が、頬のあたりに触れている。
 ひどくうれしいようなくすぐったさを感じながら、春見千尋(かすみちひろ)は天蓋付きの巨大なダブルベッドの上でぼんやりと目を開けた。
 傍らの夫に問いかけるその声音まで、どこか甘ったるい響きをおびている。
 千尋のスリムだが実用的な筋肉がきれいについた裸身を、ほどよいスプリングで支えているマットレスは、水色のリネンの夏用シーツが掛かっている。そのサラリとした感触が、まだ昨夜の埋み火を残した肌に心地よかった。
 気怠くて身動ぎするのも億劫な下半身を申し訳程度に覆っているのも、爽やかなストライプの薄いリネンの掛布だった。
(ゆうべは、ちょっと……激しすぎたかな)
 サラサラとしたクセのない黒髪に包まれた形のいい頭に、そんな思いがチラリと過ぎったものの、恥じらって反省するような殊勝な質ではない。
 それに、夫の愛撫にこれほど感じやすくなってしまった千尋を、思う存分翻弄したのは、目の前にいる男のほうだ。
 結婚した今でもしばしば見惚れるほど完璧に整ったおもてには、一般人には到底持ち得ない犯しがたい気品があった。かつては華族と呼ばれていた由緒ある血筋の直系で、畏れ多くも皇室とも姻戚関係にあるという話だ。
 少し栗色がかった髪は寝乱れて、いつもは年齢以上の落ち着きを持った彼を、悪戯な少年みたいに見せている。キラキラとした茶水晶のような瞳も、千尋を映す時には有能な政治家としての冷徹さがいっさい消えて、ただ甘いばかりの恋人のものに変わる。
 千尋よりもひとまわり長身で、空き時間にまめに通っているジムで鍛えられた体は逞しく、ベッドの上ではお堅い議員先生らしからぬ凄絶な色香が漂った。
 千尋はこの夫、三条純一郎(さんじょうじゅんいちろう)の真面目で清潔な普段の顔と、自分にだけ見せてくれる淫らで情熱的な男の顔とのギャップに、ひどく弱かった。
「そろそろ用意しろ。遅刻するぞ」
「って言いながら……何をしてるんだ、おまえは?」
 なめらかな白い胸の敏感な紅い突起を、長くて形のいい指が、執拗にくすぐっている。その淫靡な仕草を、千尋は流し目に見て、艶やかな掠れ声で咎めた。
 それでも未練がましげに離れようとしない指で揉んだり摘まんだりされ続けて、ビリビリする刺激に思わず息が上がる。
「おいっ……、純一郎っ!」
「吸ってもいいか?」
 相変わらず反応のいい妻を満足げに見下ろして、純一郎は恥ずかしげもなく露骨な台詞を口にした。
 ピンと尖りきっていやらしい色に染まった自らの胸を、千尋はしげしげと見下ろす。
 間違いなく男の自分が、こんなふうに嬲られて悦んでしまうことも、それに同性の純一郎が狂おしいほど欲情してくれることも、今でもどこか不思議な気がした。
「吸いたいのか?」
「ああ、吸いたいな」
 なんの膨らみもない平らな胸に、頭を下げた純一郎の濡れた吐息が直に触れると、薔薇色に上気した肌の下がゾクリと妖しくわなないた。
(クソッ……)
 夫の思惑どおりに煽られてしまう自分がちょっと口惜しくて、そのくせたまらなくうれしくて、堪え性のない下腹がどうしようもなく疼く。
「やっぱりだめだ」
「?」
 らしくもなく、やけにきっぱりと拒んだ千尋の顔を、純一郎は(なぜだ?)というように不服そうな目つきで、白い胸元から見上げてきた。
「俺が、そこ……弱いのは知ってるだろう? ……放せなくなる」
「わたしは望むところだが……都合が悪いか?」
 千尋の至極残念そうな表情から、純一郎はおおよその事情を読み取ってくれたように確認してくる。
「今日あたり、ホシが現れそうなんだ」
「捕り物か……。じゃあ無理はさせられないな」
 与党の有力政治家、近い将来の首相と言われる三条純一郎の最愛の妻であり、秀麗な美貌の千尋は、その繊細な外見には似つかわしくない警視庁捜査一課の敏腕刑事だった。しかも、『捜一の悪魔』というあまり芳しくないふたつ名まで持っている、警察幹部たちの頭痛の種だ。
 しかし、夫である純一郎は、殺人や凶悪事件ばかりを追う千尋の危険な仕事に深い理解と敬意を示してくれていた。
 今も、千尋の体に負担をかけまいとするように、名残惜しそうに弄っていた小さな突起から指を放し、代わりに上気した頬へと触れるだけのキスを落とした。
「悪い……」
 唯一と契った夫に我慢を強いるのは、千尋だって本意ではない。それに、激しかった昨夜の余韻を残す甘い愛撫を放したくない気持ちは、むしろ千尋のほうが強いかもしれない。
 珍しく素直に小声で謝る千尋に、純一郎はちょっと悪戯っぽい表情で微笑み返した。
「謝るな。事件が片付いたら、このツケは利子を付けて返してもらうさ」
「了解」
 それこそ望むところだというように、千尋はニヤリと微笑み返し、引き寄せた夫の首にしがみつきながら、情熱的なキスを交わした。



        2.

「安西(あんざい)、対象が現れたぞ」
 待ち合わせのメッカである駅前の広場はカップルや若者たちのグループ、たくさんの荷物を抱えて行き交う家族連れの買物客で賑わっている。
 その人混みをなるべく避けた建物の陰で、千尋は薄いブルーのスーツの襟元にさりげなくつけたマイクへ囁いた。
 無線は、広場を取り囲んだ捜査一課四係の刑事たちに繋がっている。千尋の相棒で四年後輩の安西は、ちょうど広場を挟んで反対側に張り込んでいた。
「こちら、安西です。対象を確認しました」
 イヤフォンから聞こえてくる相棒の声は、いつもにも増して緊張しているようだった。
 夏休み真っ只中の週末で、この混雑だ。一歩間違えば、犯人を取り逃がすどころか、一般人を巻き込んだ乱闘にもなりかねない。
 ましてや暴力上等で、捜査一課きっての疫病神の千尋がいるとなれば、これまでも散々その凶行に巻き込まれてきた同僚たちの、悪い予感は一気に高まっていた。
 中でも千尋の相棒として最も実害を被っている慎重派の安西が、ことさらに警戒するのも無理はないかもしれない。
 しかし、わかっていても千尋は相棒のその反応が気に食わない。
 だいたい、一年近くも相棒を務めているんだから、もうそろそろ千尋のやり方にだって慣れていい頃だ。
 もっとも、歴代の相棒を次々と病院送りや僻地の交番勤務に追いやってきた千尋のやり方に、慣れることのできる人材が、果たして警視庁にいるのかどうかも怪しいところだったが。
「絶対に、逃がすなよ」
「はっ、はいっ……!」
 念を押した千尋に、勢い込んで返事をする素直な安西は、これでもよくやってくれているほうなのだろう。
 それでも、(相変わらず、頼りねーな……)と心の中で不満そうに呟いて、千尋は派手なTシャツと茶髪のカップルのすぐ後ろに立っている対象に、背後からゆっくりと近づいていった
 対象は、広域暴力団『神和会』の元組員、栗山健(くりやまたけし)だ。
 胸元をたっぷりと開けた黒いシャツに、ゆったりとした黒いパンツのだらしない格好に、軽くウェーブのかかった長髪、のっぺりとした顔の印象は薄い。
(売れないホストみたいだな……)というのが、栗山をひと目見た千尋の感想だった。
 実際、ヒモが本職みたいな男で、一時期は歌舞伎町のホストクラブで働いていたこともあったらしい。
 五日前、西新宿にある雑居ビルの裏で、若い女が絞殺された。
 女の身元を調べたところ、近くの店のホステスだとわかり、店に出入りしていた客の中から、彼女と付き合いの深かった栗山が容疑者として浮かび上がった。
 女が殺された夜からアパートに帰っていなかった栗山を三日間探し回り、神和会のチンピラを締め上げて、栗山と連絡を取らせることに成功したのが昨夜のことだ。
 手持ちの金が尽きかけていた栗山は、あっさり食いついてきた。この待ち合わせ場所を指定してきたのも彼だ。
 女の絞殺死体が見つかり、容疑者の自分が警察に追われていることを、栗山はもうわかっている。もしもの時には、この人混みに紛れて逃走するつもりだろう。
(小賢しい真似をしやがる……)
 千尋にはもどかしいほどジリジリと、包囲の輪を縮めていく。この捕り物には、所轄の新宿署の刑事たちも加わっていて、大人数でホシの逃げ道を塞ぎ、囲い込む作戦だ。
 対象の正面にいる安西のほうが距離が近い。あと数メートルで栗山に届きそうな時、ふいに彼の顔色が変わった。
(チクショウッ、気づかれたか)
 数日間の逃亡生活で、かなり神経質になっているのだろう。栗山は怯えきった小動物みたいに、脱兎の勢いで走りだす。安西のほうへ……。
(よし……)
 そのままヤツに飛びついて押さえ込め、と千尋が念じたとたん、焦ったらしい所轄の若い刑事が安西の行く手を遮った。その上、栗山が突き飛ばした茶髪の女とぶつかって、女は金切り声の派手な悲鳴を上げる。
 一気に、現場は混乱した。
「安西っ、見失うな!」
「はいっ……」
 人混みの中を、栗山は一直線に走っていく。邪魔者は手当たり次第に突き飛ばすので、そこここで悲鳴と怒号が聞こえた。
(クソッ……)
 転んだり、立ち竦んだりしている人々を、軽いステップでかわしながら、千尋は栗山を追った。
 栗山が駆け込んだ狭い路地に、すぐ後ろから安西が追っていくのが見えた。さらに、所轄の刑事が数人続く。
 千尋は、少し遅れて路地に入った。
 この辺りは、栗山の地元だ。路地の一本一本まで知り尽くしているだろう。下手をしたら逃げ切られてしまう可能性もある。
 既に千尋の目は栗山の姿を見失っていた。
「千尋さん、ヤツは……緑川ビルに、入りました……」
 無線から、安西の声が聞こえてくる。ひどく息を切らしているのは、非常階段でも上っているらしい。
 緑川ビルは、千尋の位置から数メートルほど先にある、小さなバーやスナックがいくつも入った雑居ビルだった。
 入ってすぐに狭い廊下があり、右側にエレベーターが見えた。エレベーターは、営業時間前で停められているらしい。
 奥のほうに、非常階段に通じる扉があった。
 先に追っていった所轄の刑事たちの姿も見えないから、全員、階段を使っているのだろう。千尋は迷わず階段に向かった。
 狭いし、明かりを節約しているのかひどく暗かった。普段は店の従業員か出入りの業者ぐらいしか使っていないのだろう。
 大分上のほうで、いくつもの足音が聞こえた。
「安西……」
「千尋、さんっ……ヤツは、屋上に出ましたっ……」
 無線に呼びかけると、すぐに安西の応答があった。ゼイゼイと息を荒げた声が、刑事のくせに情けない。
 しかし、どうやら栗山を屋上まで追いつめたらしい。所轄の刑事もいるから、これで袋のネズミだと、千尋は舌舐めずりした。
 もちろん、犯人に手錠をかけるまでは、決して気を抜けない。
「……あれ? ……」
 無線の向こうで安西が何かを呟いたが、独り言のようで、千尋にはよく聞き取れなかった。確かめようとした時、屋上に出る扉が見えて、とりあえず後回しにする。
 ドアを開けると、思ったより強い風が吹いていた。
 屋上も狭く、物置代わりにでもなっているのかごちゃついている。色褪せたビールケースの積み上がった向こうに、栗山の姿が見えた。
 手前のほうのドアの近くに、安西と所轄の刑事たちが固まっていた。目の前にホシがいるのに何をもたもたしているんだと、千尋は舌打ちしたくなる。
「安西……」
「千尋さん……」
 近づいていくと、安西がいつにも増して情けないすがりつくような目つきを向けてきた。
「どうした?」
「栗山が……近づいたら飛び降りるって」
「はぁ……?」
 千尋は、思わず訊き返していた。
 小さいとはいえ、ここはビルの屋上だ。こんなところから飛んだら、よほどの奇跡でも起きない限り命はない。
 せっかくここまで追いつめたホシを、むざむざ死なせるわけにはいかないと、安西たちは手をこまねいていたらしい。
「馬鹿か、おまえは……」
 呆れたと、千尋は相棒を低い声で詰った。
 栗山が自殺するわけがない。
 いくら追いつめられたといっても、殺されるわけじゃないし、捕まったところで、裁判を受けて、何十年か臭い飯を食うことになるだけだ。
 現場の状況を見ても、殺人は衝動的なものだったし、特に残虐なわけでもなかった。殺されたほうは堪らないだろうが、それでも死刑になる罪じゃない。
 自殺するなんていうのは、ただの脅しか、頭に血が上っているだけだと、千尋は冷ややかに決めつけた。
「栗山……」
 犯人の名前を呼び、千尋はゆっくりと彼のほうへ歩き出した。
「来るなっ……。来たら、ここから飛び降りるっ!」
 安西の言うとおり、栗山は背後の手すりを掴んで、ガタガタ震えながら訴える。確かに、かなり頭に血が上っているようだった。
 手すりは低く、小柄な栗山でも簡単に乗り越えられそうだ。この建物の管理はどうなっているんだと、千尋は内心苦々しく罵った。
「馬鹿な真似はするな……。おまえには弁護士を呼ぶ権利も、裁判を受ける権利もちゃんとあるんだぞ」
 千尋が冷静に声をかけると、栗山の目がおどおどと落ち着きなく動く。当然、迷っているのだろう。
 自分の命は、ひとつしかない。飛び降りたら、それで終わりだ。
「おまえには、殺した彼女に償う義務があるんだ。償って、やり直せ……」
 償うなんてきれい事だが、生きる意味があると言えば、よほど死にたい理由でもない限り、大抵の人間はそれにすがりつく。
 栗山の指が、手すりから離れた。
 背後のドアが開く音に、千尋は気づいた。所轄か四係の誰かが、無線を聞いて駆けつけてきたのだろう。
 とたんに、栗山の瞳が大きく見開かれた。
「栗山――っ!」
 悪い予感がして、千尋は彼に向かって駆けだした。再び手すりを握りしめた栗山の体が、低いフェンスを乗り越える。
 千尋の伸ばした指が、栗山の上着の裾を掴みかけたが、支えきれずに落ちていく。
「馬鹿、野郎……っ!」
 短く罵った千尋の目の前から、栗山の姿が見えなくなった。
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