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ENDRESS TALE

紅蓮の爪痕 漆黒の愛撫 3

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           ☆

「なあ、本当に温泉より実家がいいのか?」
 ユリが往生際悪く傍らの美貌を覗き込んだのは、すでに都内からは少々離れたのどかな田園地帯を走るローカル線の座席の上だった。
「う、ん……しばらく忙しくしていて、匡(まさ)臣(おみ)たちの顔も見てなかったし」
「その分、しょっちゅう電話やメールはしてただろ」
 最近、携帯メールに凝っている貴臣の義母の美鈴(みすず)は、毎日のように自分や匡臣の写真を貴臣宛てに送ってくる。とても未亡人には見えない若々しくて無邪気な美鈴のすることには、ユリはまったく文句はなく、時々ユリ宛てにももらうメールには、貴臣の写真までつけて丁寧な挨拶と一緒に返信していた。さすがに、バスルームやベッドで盗み撮りした写真は、貴臣に見つかって強制消去させられてしまったが。もちろん誰にも見せられない秘蔵のアルバムは、内藤が完璧なセキュリティを施したユリのパソコンのハードディスクを半分近く占めている。
 しかし、その母親の趣味にかこつけて、異母弟の匡臣まで頻繁に貴臣に電話してくることには、少々ではなく気を悪くしていた。
「匡臣に休暇をもらえたら帰るって約束してて……ユリ、もしかして温泉のほうがよかった?」
「そりゃ……」
 邪気のない表情で正面からそう訊かれると、いくら厚かましいユリでも、今さら温泉のほうがいいとは言い出しにくい。
「ごめん……。だって、おまえがどこへ行きたいって訊くから」
「疲れてるなら温泉なんかどうだ、って、言っただろ」
 ようやくその顔色から何か察したらしい貴臣が謝るから、よけいに拗ねた態度は取れなくて、それでも弱々しい呟きをこぼした。
「うん、だから、おまえが温泉なんてオヤジくさいところへ行きたがるなんて思わなくて、俺のことを気遣ってくれてるのかと思ったから」
 八つ年上の貴臣に温泉がオヤジくさいと言われたことにはショックを受けて、けれど湯煙にちらつく貴臣の裸身が見たいとか、露天風呂の星空の下で薄紅に上気した肌を抱き尽くしたいとか、その少なからず不謹慎な目的を考えると、決して若者らしいとは断言できない。しかしこの際、ユリの趣味がオヤジくさいかどうかはどうでもいい。
「だからって、なんで実家なんだ? 二人で行きたい場所なんてほかにいくらでも……」
「だから……俺は、おまえと一緒なら、別にどこだっていいんだ。今だって……どきどきしてるし」
「え?」
 つい責めるような本音を吐くと、この上なく可愛らしく頬を染めた横顔に、あっさり殺し文句を返されて固まった。
 それならなおさら何も実家じゃなくてもいいだろうとは思ったが、多分言わぬが花だろう。貴臣には貴臣の事情があるんだし、血の繋がりがない癖に妙に貴臣とよく似た、おっとりとした美人の未亡人に会うのが嫌なわけじゃない。邪魔なおまけは一人いるけれど、と不愉快なことは都合よく意識の隅に押しのけた。それよりも……。
「どきどき、してるのか?」
「うん」
「どこが?」
「え? ……ユリっ?!」
 この辺かなと薄手のジャケットの下へ掌を忍ばせて、手触りのいいシルクの明るいオリーブのシャツ越しに、なめらかな胸を少々卑猥にまさぐった。こんな場所で何をとうろたえて身を捩ろうとする肩を、もう一方の腕でつかまえて離さない。下着をつけない貴臣の感じやすい突起を、指先で引っかけるみたいにして弄ってやると、甘い痺れと羞恥に驚いて見開かれた漆黒の瞳が、たちまちじんわりと潤み、車窓から射し込む明るい陽光に艶やかに煌いた。
 薄闇の中で見るこんな顔も淫靡だけれど、真昼の光の下で見ればなんだか悪いことをしているみたいで、いっそうそそられた。
「本当だ。どきどきしてる……貴臣」
 震えている耳元へわざとトーンを落とした低音で囁いて、ついでに赤く染まった美味しそうな耳朶をかりっと齧ってやる。びくんと上体を揺らした貴臣が、「あん……」とか細い喘ぎを洩らすから、「しっ!」と唇を押さえて意地悪く笑った。
「触る、なっ……。そこ、だめっ」
 ユリの背中にある刺青をそっくりそのまま縮小して写した、蒼い竜を彫り込まれた左胸はことさら弱い。恥ずかしそうに上擦る息を堪えて、見下ろしているユリに怯えるみたいに左右へ首を振るから、悪趣味にもっと泣かしてみたくなる。
(やっぱり、オヤジかな……)
 若者らしい爽やかさなどなかろうと、貴臣のこれほど色っぽい表情が見られるなら構いはしない。幸い、三つ離れた席に幾分耳の遠そうな老婆が座っていたくらいで、近くの席にはほかに乗客の姿もなかった。
「いや……ユリ。誰か、来たら」
「誰も来ねーよ」
 けれども車内を巡回している車掌が来るかもしれないし、座席を移動する客もいるかもしれないと、まだ往生際悪く抵抗する貴臣を強引なキスで捻じ伏せた。逃げまわる小さな舌先をとらえ、その甘さをきつく吸い上げて味わいながら、シャツの下でもう硬く凝ってしまった胸の先端を、親指と人差し指でつまんでぐりぐりと擦り合わせる。
「やぁ……ゆり、だめ、それ、だめぇ」
「我慢、できなくなるか?」
 追い詰められた泣き声を上げる貴臣が、本当にそれを嫌がっているわけではないことはわかっている。ただ生来の感度のよさをユリの手でさらに引き出された肉体は、快楽には恐ろしく脆くて、一度火が点いてしまえばどこまでも貪欲に求めてしまう。理性も及ばず、ここがどこかも忘れて痴態を晒してしまうことを怖がって泣くから、「全部はしねーよ」と安心させるように頬へ軽く口づけした。
「ひどいことはしねーから、ちょっとこうして寄りかかってろよ。貴臣に触っていてーんだ」
「う……ん」
 感じすぎる胸からは指を離されて、代わりに腰へまわした腕に背中から抱き寄せられると、大人しくしなやかな上体を預けてくる。最初から自分に凭れろと言えば、慎み深い貴臣は人前では嫌だと絶対に拒むだろうが、もっと恥ずかしい行為をされるかと脅かされたあとだから、たやすくそれを許してしまった。巧妙なユリの手管だったが、気づきもしない根っから初心な恋人が愛しくて堪らない。
「なあ、前に佐久間(さくま)と話したこと、覚えてるか?」
「佐久間さん、と?」
 肩に乗せたさらさらした髪の毛を、わざと吐息でくすぐりながら呟くと、貴臣はまるで心当たりもないように訊き返してくる。
「ほら、佐久間と新田(にった)の……」
「あ……養子縁組?」
 記憶を手繰るように促せば貴臣も思い出したらしく、そのことかと肩先からおもてを上げる。
『正竜会』傘下で、ユリとも旧知の仲である『藤川組(ふじかわぐみ)』の組長、佐久間令(れい)が、組の若頭であり恋人でもある新田正之(まさゆき)と養子縁組したいから手続きを教えてほしいと、弁護士の早乙女を訪ねてきたのは随分以前のことになる。その時まで貴臣は、養子縁組というのが男同士のカップルの結婚手段だということを、まったく知らなかった。
 当の佐久間たちのほうは、やはり頭の硬い新田が互いの立場を考えて渋っているせいで、一向に進展していないようだったが、ユリもまた自分と貴臣のことを、あれ以来何度か考えることがあった。特に去年大学を卒業してからは、世間一般で言う社会人としての責任も増したし、それ以上に『正竜会』やほかの組織からもユリの動向は注目されていた。
 好むと好まざるに関わらず、一度盃を受けた『北辰会』組長の地位をないがしろにできるとは思わなかったし、ましてや『正竜会』の跡目問題がすっかり落ち着いたわけでもない。父親の竜造の身に何かあれば、すぐにそれも再燃するだろう。ヤクザ稼業を続けるかどうかはともかく、傍らに置いている貴臣をいつまでも情人扱いすることは、ユリの本意ではなかった。
 しかし、今のままなら誰の目から見ても、貴臣は『北辰会』組長の情人でしかない。それなら、どうするか。ユリが貴臣の籍に入るというのは、世間に互いの立場を知らしめるひとつの選択肢ではあった。とはいえ、ヤクザと繋がりを持つとなれば、貴臣の実家にとっては迷惑極まりない話だろう。たとえ『北辰会』の組長を辞そうと、ユリが『正竜会』組長の庶子であることは、一生ついてまわる。
 だが、逆に貴臣を正木の籍に入れることは、かえって揉め事を増やす結果が目に見えている。
「貴臣は、どう思う?」
「え?」
「その……俺と養子縁組しても構わないか?」
「え、ええっ?」
 肩先で驚いたみたいに喉に引っかかった声を出されるから、さすがに唐突すぎたかと後悔した。これがプロポーズの言葉なら、さぞかし間抜けに聞こえただろう。
「いや、今すぐどうこうっていう話じゃないが……」
「あ……」
 とりあえず意見を聞きたいだけだと言い直すと、貴臣もいくらかホッとしたような顔色を浮かべた。その耳がほんのりと赤いのは、やはり養子縁組の裏にある意味を意識したからだろう。
「俺は構わないけれど、そうなると俺だけの問題じゃないだろうし……それに、どうして?」
 七年も一緒に暮らしてきて、今さら何をという気持ちが貴臣には強いらしい。だけどそう言われればなおのこと、七年間も貴臣の立場を曖昧なものにしてきた自分に、責任を感じずにはいられない。
「佐久間も言ってただろう。《けじめ》をつけたいんだ。貴臣に、欠片だって後ろめたい思いはさせたくない」
「俺は……後ろめたくなんか」
「小夜香(さやか)のこと、まだ気にしてるだろ?」
 先週関西へ行った時に、大阪の『新明会(しんめいかい)』組長の長女である新宮(しんぐう)小夜香と久しぶりに再会した。かつてユリの父親の竜造から、小夜香がユリの婚約者だと告げられて以来、貴臣が今もその話が蒸し返されるんじゃないかと案じていることは、薄々気づいていた。美しく成長して花嫁修業に励んでいる小夜香を見れば、よけい不安を掻き立てられたらしくて、大阪ではずっと塞ぎ込んでいた。
 自分が男だということと、ユリより八つも年上であることに、貴臣はいまだに罪悪感を持っている。それは常識的な見地からは至極まっとうな感情だし、ユリもあえて咎めるつもりはない。罪だと知っていてもユリを離すことができない、その貴臣の真摯な恋情こそが愛しかった。だからこそ、小夜香やほかの女のことで、これ以上貴臣を苦しめたくはない。
「正直、『正竜会』やほかの組織となんの関係も持たない東堂の養子になることは、俺にとっちゃ悪い話じゃねーと思う。だが、こっちの勝手な都合で、お袋さんや五代(ごだい)のじいさんたちに迷惑もかけたくない。だからこれは、貴臣とお袋さんたち次第だが、考えてみてくれないか?」
「でも、ユリは……?」
 それでいいのかと訴えるようなまなざしに問われて、「おいおい」と苦笑した。
「今さら、俺の気持ちを疑うのか? 一生、貴臣に添い遂げる……そんなの確かめるまでもないことだろ?」
 笑って抱きしめるユリの胸の中で、貴臣はこくりとうなずいた。だが、離したくない、もっと深く繋がっていたいと、焦燥にも似た想いに駆り立てられる本当のわけを、二人はまだ知らなかった。
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