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ENDRESS TALE

紅蓮の爪痕 漆黒の愛撫 9

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           ☆

「もっとゆっくりしていってくれればいいのに。淋しいわ」
 見送りに出てきた美鈴がきれいな眉をいかにも淋しそうに顰めるから、貴臣はひどく困った顔になる。
 昨夜の忍者の始末は五代老に任せたので、美鈴たちは騒ぎのあったことも知らないはずだった。しかし一体何があったのかと問われれば、ユリたちにだって説明のしようもない。あの忍者の正体も元信の言ったことの意味もいまだにわからないが、貴臣が目的だったことはほぼ間違いないだろう。その貴臣にも、夜ごとの悪夢という謎があった。原因のわからなかったそれは、どうやら元信の言った《gate》という言葉と関係があるらしい。
 こっちが嫌でも無理やり引き込もうという元信の言い方は不愉快だったが、それ以上に貴臣をよけいな争いに巻き込みたくはない。もう十分苦しんだ。散々傷ついてきた分も、今は幸せだけを与えてやりたいのに。
「また、すぐに来ます。養子縁組の手続きもあるし」
「そうね。そうしたら、この家がユリさんの実家になるんですもの。いつでも一緒に遊びに来てね」
「はい」
 貴臣の代わりに答えたユリに、美鈴はにっこりと微笑んだ。匡臣のほうは養子の話にはどこか複雑な表情だったが、強度のブラコンのことはあえて無視した。
 駅までは、五代の車が送ってくれた。このまま屋敷へ戻るという老人も一緒に乗り合わせていた。愛娘と孫ににこにこと手を振った老人は、その姿が見えなくなりシートに身を戻すと、急に険しい顔つきになる。
「貴臣、連中の技は読めたか?」
「はい。おそらく伊賀者かと」
 淡々とした貴臣の返事に、俺はそんなことは聞いていないぞと目を瞠った。どうもますます時代物めいている。
「しかし、この平成の時代に忍者とはな」
 さすがに老人でさえユリと同じ感想を持ったらしいと、どこかでホッとした。いくら恋人が現代の忍者もどきとはいえ、あんな連中が当たり前に暗躍している世の中だとは思いたくない。
「伊賀も甲賀も、その技のほとんどは絶えています。あれは、何者かが新たに組織したものだと思います」
「ふむ」
 さもあろうとうなずいた老人は、リアシートの隣に座った貴臣の繊細な横顔をじっと見つめた。
「元信殿は、なんと言われていた?」
「俺は、《gate》だと。ニューヨークへ来いと言われました」
「どういう意味か、言わなんだか?」
「はい」
 ふーんとまた考え込むような様子を見せたが、今度はやはり意味を量りかねたらしい。再び貴臣を覗き込む。
「で、行くのか?」
「いいえ、まだそこまでは……ニューヨークといわれても、漠然としていますし」
 貴臣が行くというなら、ユリが止めるところだった。忍者といい、元信といい、この一件はきな臭すぎる。ニューヨークにどんな化け物が待っているかわかったものじゃない。
「情報が必要か?」
「はい。できましたら」
「当たっておこう」
「よろしくお願いいたします」
 最小限の返答で五代の協力を取りつける、貴臣のやり方も巧妙だった。けれど何より、この老人が貴臣を信頼し、その才能をこよなく愛しているのだろう。
「ま、わしが何か調べる前に、その男がとっくに動いておるだろうが……収穫はあったか?」
 にっこりと鋭い視線を向けられて、ユリは抜け目のない爺だと五代老を睨んだ。しかし、すがるみたいに傍らから見上げる漆黒の瞳には、いたわりを込めた笑みを返してやる。
「時間が少なすぎる。まだ大したことはわかっちゃいねーよ。だが、あの坊主は意外なところで正体がわかったぞ」
「意外なところ?」
 まるでゆうべユリを庇って易々とあの忍者たちを倒した男とは思えない、頼りきったまなざしを向ける貴臣は可愛らしくて、二人きりなら抱きしめてやれるのにと残念な気分になった。
「三井がミリタリーオタクなのは知っているだろう?」
「うん。部屋にモデルガンとか迷彩服とかいろいろあったけど」
 実際に組同士の抗争ともなれば、本物の銃を撃って走りまわっている男が、何が楽しくて玩具の銃で遊ぶのかは、ユリにも貴臣にも理解できなかったが。
「あいつのスクラップしてる新聞記事の中に、六年前に元信が関わってる事件があった」
「自衛隊?」
「いや、警視庁第6機動隊特殊急襲部隊(SAT)だ。最終階級は警部補。テロ事件の渦中でマスコミの攻撃に遭い、結局部下を亡くしたことで引責辞職している」
 今朝九鬼から届いた報告の内容を、そのまま貴臣に伝えた。道理で僧侶らしくないはずだった。一応警視庁の所属だが、SATは対テロの特殊部隊だ。アメリカのデルタフォースやイギリスのSASの日本版といったところで、警察官というよりはむしろ軍隊に近い。元軍人の坊主なんて、胡散臭いことこの上ない。
「ついでに、あいつの主ってのは、天在日輪宗の本山、輪影寺の百何十代目かの座主で天如(てんにょ)というそうだ。なんでも《空海の再来》といわれる天才密教僧らしい。爺さんの言ってたとおり、今年、二十一歳。そんなもんが本当にあるのかどうかわからねーが、大した法力の持ち主らしくて、政界や財界のお偉方からの信頼も篤い。最近じゃ、徳川家康の相談役だった坊主にたとえられて、《平成の天海》とか呼ばれているらしいぞ」
「空海に天海か。……大物だな」
 貴臣は、どこかぼんやりと薄い肩を竦めてみせた。元信に言われた《gate》という言葉が、気になっているんだろう。なんの門だかは見当もつかないが、こうなると元信の主が密教僧だというのもいかにも意味ありげだ。とはいえ、それと忍者の関係となるといっそう謎は深まるばかりだ。
「ニューヨークの様子はどうだ? 例の生物兵器の連続テロ事件から、まだ復旧の見通しは立たんのだろう?」
「ああ、殺人、強盗、レイプ……。街全体がスラム化して、復旧どころの騒ぎじゃないだろう。政府は事態の沈静化に特殊部隊まで投入してるって話だが、マンハッタンの中で今何が起きているのか、本当のところを知っている人間は誰もいない」
 五代老に話を振られて、ユリは当たり障りのない返事をしたが、案の定老人はそれでは納得しなかった。
「軍が動いておるのなら、おまえさんの義理の父親辺りが何か知っているんじゃないのかな?」
 どうしてユリの母親の再婚相手であるアーサー・キングのことまで知っているのかとは思ったが、『正竜会』とも繋がりを持つ五代老がどこかで聞いていたとしても不思議はない。
「ああ……今現在、マンハッタンに出入りするには軍の許可が要る。俺が手を貸すなら、許可を出してもいいそうだ。シシリアンにチャイニーズマフィア、米軍は暗黒街と手を組んでいる。それだけ状況がひどすぎるってことだろうが……」
「何か、裏があるのか?」
 さっきまでぼんやりしていた貴臣が、急に珍しく熱心に身を乗り出してくるから、だから嫌だったんだと眉を顰めた。元信に挑発されてから、貴臣がニューヨークに興味を持つことは薄々予想はついていた。
 それを先まわりして、わざわざアメリカのアーサーに連絡を取っているユリもユリだったが、本音を言えばあんな端から危険とわかっている場所に貴臣を近づかせたくはない。元信の言うろくでもない運命とかが待っているならなおさらだ。
「ただの治安維持ってのにしちゃ、仕掛けが大掛かりすぎる。軍に取っちゃ諸刃の剣にもなりかねない、ニューヨークの闇を知り尽くしたマフィアの手を借りようってんだ。それなりの目的があるはずだ」
「《gate》……か」
 あまり冴えない顔色の中でも、そこだけは鮮やかに紅い唇がぽつりと呟く。ユリもまた同じことを考えてしまったから、あえてアーサーにその話はしなかった。いずれにせよ、ユリの言うことを大人しく聞くような貴臣でもない。どうしても気になるとなれば、単身ニューヨークに潜入するぐらいやりかねない。それくらいなら、側にいて貴臣が最も安全な方法を取るべきだろうとは思う。できれば、横浜で自分の側に縛りつけておきたい気持ちは変わらないが。
「ともかく、《gate》の謎を解くには、まだ情報が少なすぎる。我慢して待て」
「うん」
 ユリが何を警戒しているかは、貴臣にだってわかっているんだろう。それには素直にうなずいてみせるから、しなやかな背中をぎゅっと抱き寄せた。理解のある老人は、それには見ない振りをしてくれた。
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