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紅蓮の爪痕 漆黒の愛撫 12

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           ☆

「忙しいのに、見送りまですまなかったな」
 成田の出発ロビーは、相変わらず旅行客でごった返していた。その平和な光景は、この先ユリたちを待ち受けているはずの暴力と死の支配する世界とはかけ離れた明るさで、視界を慰めながらしばしの別れを惜しんだ。
 ここまで車で送ってくれた九鬼を振り返り、ねぎらいの言葉をかける。自分の恋人を何より優先するユリのわがままを、常に黙って受け止めてくれるこの若頭には、どれほど感謝しても足りない。もっとも、その恋人の早乙女には、感謝が態度に表れていないと散々に苦情を言われたが。
「いいえ。どうかお気をつけて行っていらっしゃってください。何かありましたら、いつでも連絡してください」
「ああ。組のことはよろしく頼む」
「はい」
 かつて、芙緋人を追って貴臣と二人きりで香港へ乗り込んでいった時も、留守中を九鬼に任せっきりにしてしまった。若頭とはいえ、組長不在の留守を預かるのが簡単ではないことは、ユリにもわかっている。その時には、『北辰会』を陥れようとした連中に顧問弁護士の早乙女が襲われ、危うく一命を落とすところだった。それだけではなく、輪姦され深く傷ついた早乙女の心まで救ったのも九鬼だった。
 今度もまた、留守を預かる九鬼や早乙女に迷惑をかけることは避けようもない。それでも九鬼は、ユリが危険極まりないニューヨークへ行くことを止めなかった。
「例の僧の件は、引き続き調査を続けます。何かわかりましたら、すぐにお知らせします」
「ああ、こっちもできる限り状況を知らせるようにするよ」
 とはいえ、マンハッタンに入ってしまえば、通常の連絡手段が使えるかどうかもわからない。あらゆる事態を考えて入念な準備をしておかなければ、ミイラ取りがミイラになりかねなかった。
「先生も、お気をつけて。ユリさんのことをお願いします」
「はい」
 ユリ以上に、九鬼に対して責任を感じている貴臣は申しわけなさそうに深々と頭を下げるから、それには穏やかな目つきで笑ってみせる。
「そろそろ行くか」
 これが永遠の別れじゃない。芙緋人を連れ帰るまでのことだと、ユリは貴臣を促した。その貴臣の視線が、凍りついたようにある方向へと止まるから、一体なんだとその先を追った。
「あいつ……」
 ロビーの呑気な旅行客たちも、その異様な姿の集団には驚いて目を奪われる。墨染めの衣に網代(あじろ)笠、草鞋(わらじ)を履いた僧侶の行列の先頭に、ひと際大きな男がいた。笠の下の顔は、紛れもないあの元信だ。
「どうやら同じ飛行機のようですね」
 目的地と時間を考えれば、おそらくそうだろうと目は墨染めから離さずに九鬼へうなずく。向こうも気づいたように、笠の影から鋭い眼光が貴臣を窺い、そしてユリと睨み合う。ふっと、大男の口元が綻んだように見えたのは、気のせいだろうか。
 元信は立ち止まることなく、僧たちを率いてゲートの向こうへ消えていく。その一人一人もよく見れば、足音もなくひたひたと歩み去る様子が尋常ではない。
「貴臣」
「うん。相当な遣い手ばかりみたいだな」
 淡々とした声音には動揺する気配もない。貴臣もまた、この先の困難を十分予想しているんだろう。
(こっちも、人数がいるな)
 二人だけでは、十分な身動きも取れない。それに貴臣の負担が大きすぎる。だが、その辺のチンピラの寄せ集めなら、かえって足手まといにしかならないだろう。
「どうします? やっぱり三井たちをお連れになったほうが」
「いや、国内で騒ぎは起こしたくない。現地調達するさ」
 いち早く事情を察した九鬼が気をまわすから、それには及ばないと首を横に振ってみせた。
「心当たりでも?」
「まあな」
 つてならいくつかあると、口元へ不敵な笑みを浮かべる。いずれにしろ、この先信用できるのは自分自身と貴臣だけだ。横浜の王を通じて、ニューヨークのチャイニーズマフィアに協力を求め、そしてペンタゴンのアーサー・キングからも、上手くいけば特殊部隊を借り出せるかもしれない。だが、いつ背中から撃たれないとも限らない。魔都の手駒にするには、そのほうが使いやすかった。
 闘いの中では、どれだけ大胆にも冷酷非情にもなれる。『正竜会』組長、正木竜造の血を最も濃く引くこの青年の怖さを誰よりもよく知っている九鬼は、ただその怜悧な横顔を見守った。
 そして、その傍らに佇むのはユリよりさらに冷ややかな紅蓮の炎をまとった夜叉だった。
 わき立つ血を抑えきれない。本当は、ユリたちと共にニューヨークで闘いたいのは、三井ではなく九鬼自身かもしれない。それを堪え、九鬼は静かにユリへとまなざしを戻す。
「では、すべて手はずどおりに」
「うん。頼む」
 身を翻した青年へと、しなやかな背中が寄り添い新たな運命へと歩きだす。その行く手へ一瞬燃え盛る火炎の海が見える気がして、九鬼は目を細め、いつまでもその場へ立ち尽くした。



end.
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